【あらぬ疑いから行政処分に?】ますます厳しくなる行政の最新動向

【あらぬ疑いから行政処分に?】ますます厳しくなる行政の最新動向

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【あらぬ疑いから行政処分に?】ますます厳しくなる行政の最新動向

ますます厳しさを増す行政処分

今回のコラムでは、最新の行政の動向について解説します。
2016年5月16日、とある処理業者が10日間の事業停止処分となったニュースが報道されました。その概要を下記にまとめます。

【岐阜の産廃業者を事業停止】
・岐阜県は、岐阜市則松の「産廃処理業者A」の産廃収集運搬・処分の事業停止の罰則を下した。
・事業停止期間は10日間。
・県によると、同社は2016年5月~17年1月に公布された計4回のマニフェストに処分終了日を記載せず、票交付者に写しを送付した。
・マニフェストの不備が見つかったのは、2017年2月、同社が一般廃棄物の発砲スチロールを無許可処理した疑いで立入検査を行ったとき。

この事例からいえることは2つです。

①ちょっとした記載漏れのレベルでも行政処分となる

行政処分となった直接の理由は、マニフェストの記載漏れです。
収集運搬・処分の許可を持つ業者ですから、日頃から多くのマニフェストを取り扱っていたはずです。
そんな中で、「2016年5月~2017年1月までの10か月で記載漏れは4回」という数は、裏を返せばほとんどのマニフェストは適正に取り扱われていたと想定されます。

それにもかかわらず、たった4件の記載漏れで行政処分が行われたのです。たった4件とは言え、違反は違反ということなのでしょう。
この事例から、法の規制だけでなく、法に基づいた行政の取り締まりも強化しているということが分かります。マニフェストの記載漏れは、処理業者のみならず、排出事業者も行ってしまう可能性のあるミスです。

②どのような理由で立ち入り検査をされるか分からない

ニュースによれば、行政が処理業者のマニフェスト記載漏れを発見したのは、同社を一般廃棄物の発泡スチロールを無許可処理した疑いで立ち入り検査をした時とのことでした。
その立ち入り検査に関する報道も出ています。それは、下記のようなものでした。

・岐阜市中央卸売市場から出る大量の発泡スチロールを、市内の業者である「産廃処理業者A」が、端穂市内にある産業廃棄物処理施設で無許可処理をしていることが分かった。
・市では、産業廃棄物処理法に基づく「ごみ処理基本計画」で、発砲スチロールを一般廃棄物と規定している。
・廃棄物処理法に違反する可能性があり、県と端穂、岐阜の両市が、同法に基づく立ち入り検査などを実施した。

県と市が発泡スチロール(しかも、卸売市場から発生し大量に出ている)を、「産業廃棄物として処理してはいけない」と行政処分まで検討しているという内容です。
発泡スチロールは一般的に合成樹脂でできており、廃プラスチックに該当します。
JWセンターがHPで紹介している産業廃棄物の一覧表には、「すべての合成高分子化合物」且つ「あらゆる事業活動に伴うもの」が廃プラになるとしています。 ですので、発泡スチロールは廃棄物処理法上、産業廃棄物の廃プラなのです。


しかしながら、今回の報道では、行政は発泡スチロールを“一般廃棄物”としています。理由は、市の出している「一般廃棄物処理基本計画」に規定してあるから……。

記事中では、「一般廃棄物処理基本計画」は「同法(廃棄物処理法)に基づく」となっていますが、基づいているとは言えません。 廃棄物処理法に基づくと、事業者から排出される発泡スチロールは“産業廃棄物”となるからです。

地方自治体は、下記の図のように一定の限度内で、法律の水準を上回る規制(上乗せ)や、規制の対象を拡大(横出し)することが認められています。

しかし、産業廃棄物である廃プラを一般廃棄物に定義することは、上乗せでも横出しでもなく、法で決まっていることを、上書き・変更する行為になると考えられます。

結局、この事件は「発泡スチロール問題」に直結した理由で行政処分は下りませんでした。 しかし、全く別件のマニフェスト記載漏れで行政処分が下りました。

「法的な根拠がない」と思えるような疑いであっても、ひとたび注目されれば立ち入り検査に発展します。そして、管理状況をくまなくチェックされれば、ほとんどの企業では何かしらの不備が発見されてしまう可能性が高いのです。

行政処分への対応策、結局どうするべきか?

今回の事例では、疑いがかからないようにすることは不可能だったといえます。法の規定に基づいて産業廃棄物として処理していたものを、行政が一方的に一般廃棄物と指定しているわけですから、ここに対する有効な対応策はなかなか編み出せません。

だとしたら、厳しい現実ですが「立ち入り検査されても問題がない状態を整備する」ことが唯一の対応策です。

ですが、これは簡単なことではありません。特に紙マニフェストは人が手作業で処理している以上、どうしてもミスが起こる可能性は排除できません。

例えば電子マニフェスト、さらにはコンプライアンス機能が上乗せされた独自システム等を導入することにより、自動的にコンプライアンスが担保できるといった仕組みを作らなければ、「有効な対応策」とはならないようになってきていると感じます。

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    Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

    セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。