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【電マニ導入後に想定される3つの困った!】意外と簡単な解消方法
目次
電マニを導入したはいいけれど…出てくる小さな”困った!”
改正された廃棄物処理法は平成30年4月1日から施行されていますが、一番注目を集める電子マニフェスト義務化は平成32年4月1日の施行となっています。
これは、各事業者が電子マニフェストに対応していく為の「猶予期間」であると考えられます。といいますのも、電子マニフェストは導入を決めた後に、小さな”困った!”が出てくることが多々あるのです。
義務対象者はそれらをすべてクリアして、施行日には電子化されていることが求められます。ですので、施行日直前になっての導入では、なかなか間に合わせるのが難しいことになります。
今回のコラムでは、電子マニフェストを使用する上で排出事業者様からよくお聞きするお困りごとと、その解決法を解説します。
品目の複数チェック、電マニではどうすれば?
例えば、ほとんどの紙マニフェスト書式では、品目のチェック欄があります。こちらに複数のチェックがされているマニフェストはよく見かけます。
しかし、これを電子マニフェストで行おうとすると、「上手くいかない」という声をよくお聞きします。
そのような場合、多くの排出事業者様は、すでに電子マニフェストを活用している処理業者に問い合わせをすることが多いと思います。そして、そこで得られる回答の多くは「電子マニフェストでは複数品目で登録できない」というものです。
実際にできるかできないかは置いておいて、その時、排出事業者様は「処理業者は廃棄物のプロだから、電子マニフェストにも詳しいだろう」と思われ、「プロができないと言うのであれば、できない」と、諦めてしまうことがあるかもしれません。
しかし、当然、処理業者の中でも電子マニフェストに関する熟練度は千差万別ですので、「実はよく知らないだけで、機能的には可能」な内容も少なくありません。
複数品目を電マニで対応する方法~2パターン~
紙マニフェストで品目の複数チェックをしている場合は、大きく分けて2つのパターンがあります。それぞれのケースの場合、電マニではどのように登録するのかを解説していきます。
①「一体不可分」の廃棄物を委託する場合
例えば、蛍光灯は主にガラスと金属から構成されています。また、建設廃棄物などは現場での分別が困難な場合があります。
こういったひとまとまりの廃棄物を委託する際に、紙マニフェストでは複数のチェックをしたうえで、「産業廃棄物の名称」欄に、適切な名称を記載することで対応しています。
▶このケース、電マニの場合は……「一体不可分の廃棄物」カテゴリーから選択
このような場合、電子マニフェストでは「廃棄物の種類」を選択する時点から、「一体不可分の廃棄物」というカテゴリーがあります。
これらの中から適切なものを一つ選択すれば、わざわざ廃プラやガラスなど、細かな品目に分けて複数登録しなくてもOKという訳です。
②積み合わせ回収の場合
2つ目は、積み合わせ回収の場合です。
品目としては分かれている(分けられる)けれど、1つのトラックに合わせて積んでいる場合があります。この場合も、実態として紙マニフェストに複数チェックを行っている排出事業者様がおられます。
しかし、これは厳密にはNGです。こうした場合、マニフェストは「廃棄物の種類ごと」に交付することが定められています。そのため、廃棄物が2種類あるのであれば、マニフェストは2部発行しなければならないのです。
▶このケース、電マニの場合は……廃棄物の種類のみを2種類登録する
このような場合、電子マニフェストですと少し工程が簡略化されます。
紙マニフェストでは、2部発行するのであれば、すべての項目を2回書かなければなりませんが、電子の場合には、廃棄物の種類のみを2種類登録するだけで、自動的に2つのマニフェストが発行できる仕組みがあります。
電子マニフェストのQ&Aでも、下記のように回答されています。
A.事前に設定することにより最大10品目まで一度の操作でマニフェスト登録をすることができます。
ただし、1件のマニフェスト情報に10品目が記載されるのではなく、10件のマニフェスト情報(1件にマニフェスト情報に掲載される産業廃棄物の種類は1種類)を一度の操作で登録する形となります。
しかし、この方法を「できない」という事業者は非常に多いです。
なぜなら、そのまま電子マニフェスト登録画面で、廃棄物を2種類登録しようとすると、エラーが出るからです。「産業廃棄物は1件までしか入力できません」と赤字の警告文が出ます。こんな警告文を見れば「複数登録は無理なんだ」と思ってしまうのも無理がないように思います。
しかし、Q&Aでは「できる」と書いてあります。これはどういうことなのでしょうか。
Q&Aでは“事前に登録することにより”と書いてある点がポイントです。これは、事前に別の画面で「複数品目の入力を行えるような」設定をしなければならないのです。
電マニで複数の品目登録を行うための事前設定の方法
実際にその設定の仕方をご説明します。
メニューから「環境設定」の「表示項目設定」をクリックしていただくと、「産業廃棄物の複数品目入力を行う」という項目があります。ここにチェックを入れておけば先ほどのエラーは出なくなります。(※「確認事項内容を承諾します」にもチェックが必要です。)
こうすることによって、複数品目の同時登録が可能となります。排出事業場や委託先情報などは全く同じ内容でコピーされ、わざわざ2回の登録作業をしなくても、複数のマニフェストが登録されます。
「事前の設定」に気づかない方が多いため、意外と知られていないですが、気づくことができれば便利な機能です。
電マニの“自動報告”から、特定のマニフェストの報告を除外したい!どうすれば?
有価物に対しても“自社管理”用でマニフェストを発行している場合
また、電子マニフェストの特徴として、紙マニフェストのように行政へ年に一度交付の状況を報告しなくてもよい点があげられます。電子マニフェストで登録した分のマニフェスト情報は、JWNETを通じて自動的に報告されます。
排出事業者様の中には、有価物の取引に関しても運搬又は売却を確認するため、便宜上、紙マニフェストを発行している方がいらっしゃると思います。その場合、交付状況の報告の際は、有価物のマニフェストは本来廃棄物処理法に基づいて交付するものではありませんので、報告書から除外するだけでOKだったと思います。
しかし、電子マニフェストの場合は少し勝手が違います。
前述した通り、登録した分のマニフェスト情報は、自動的にJWNETを通じて報告されます。紙マニフェストの際は報告書作成時に除外できた有価物の情報も、このままではマニフェスト発行実績として報告されてしまうのです。
これは、広域認定制度等、マニフェストの発行が必要ない特例制度を使用している場合でも同様です。免除されているものの、自主管理で登録をする場合は、勝手に報告がされてしまいます。
▶このケース、電マニの場合でも……報告を除外する方法があります
しかし、心配には及びません。こちらも、「設定」によって対処できます。
電子マニフェストを登録する際に、「連絡番号3」という項目に「999」と入力すれば、自動的に行われる行政報告から除外される設定ができます。
これはマニフェスト交付・登録が不要な再生利用制度や一般廃棄物であっても、電子マニフェストを活用して、マニフェスト情報と一体で管理したいとの要望に応えたもので、JWNETから公式に認められている方法です。
到着時有価物のマニフェストはどうやって登録するの?
そもそも到着時有価物とは?
また、到着時有価物の電マニ登録方法に関しても、よくご質問を頂きます。
到着時有価物とは、有価物の輸送費が売却代金を上回る場合に、排出事業場から処分先までの輸送中は廃棄物として扱い、処分先に引渡した時点で有価物として扱うもののことを言います。
環境省の「規制改革通知(H25.3.29付)」では、売却代金と運送費を比較し、排出事業者側に経済的損失がある場合(「運賃による逆有償」「手元マイナス」)については、輸送段階は産業廃棄物に該当し、引取側に到着した時点で廃棄物に該当しなくなる場合があると示されています。
紙マニフェストの場合、必要な伝票は、実質、A票・B1票・B2票のみとなり、C票以降は不要となります。では、電子マニフェストの場合はどのように対応するのでしょうか?
電子マニフェストでの登録方法は?
▶このケース、電マニの場合は……処分業者を「報告不要業者」に設定する
JWNETの業者設定には『報告不要業者設定』というものがあり、収集運搬や処分の終了報告が不要になる場合に使用します。
到着時有価物は、荷物が到着した時点で廃棄物ではなくなるため、引取側には処分終了等の報告する義務は発生しません。ですので、引取側を『報告不要業者』として登録します。
そして、マニフェストを発行する際、【処分業者】欄には事前に登録した『報告不要業者』を選択します。
処理委託後は、収集運搬までは産業廃棄物であるため、運搬会社からの運搬終了報告を確認する必要があります。ただし、この設定にしておくと運搬終了報告がされたと同時に、自動的に処分と最終処分が終了したことになり、照会画面では運搬、処分、最終処分の全てが完了している表記になります。
ただ、自社運搬の場合は到着時有価物として電子マニフェストを発行することができません。
自社運搬の場合、①収集運搬終了報告は不要であること、②搬入先が報告不要業者の場合、処分終了報告等が不要になること。この2点より、運搬も処分も終了報告が不要になるため、マニフェストを発行する意味がないということになるためです。
結局、紙マニで出来たことは、電マニでも出来る
以上3点、いかがでしたでしょうか?
紙で発行するマニフェストを電子化するのが、電子マニフェストです。当たり前のことですが、通常紙で行えていることは電子になっても対応できるように設計されています。
もし、対応できない現状があるのであれば、その原因は「対応方法を知らないだけ」か「そもそも紙でも認められていない運用方法か」のどちらかの可能性があります。
せっかく電子化するのでしたら、これを機に管理体制も強化するつもりで、マニフェストの運用方法を見直してみてはいかがでしょうか?
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。