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【蛍光灯も規制対象に!】水銀の法改正で排出事業者がすべきこと
平成29年10月1日、廃棄物処理法の改正が行われ、水銀廃棄物に関する規制が強化されました。
今回のコラムでは、強化された中でも多くの排出事業者様に関係する可能性の高い「水銀含有ばいじん等」と「水銀使用製品産業廃棄物」に焦点をあてて、何がどう変わったのか、排出事業者にはどのような対応が求められるのかを解説します。
目次
蛍光灯や水銀電池を取扱っている排出事業者は要注意!
今回の改正に伴い、多くの排出事業者様から下記のような蛍光灯に関する質問をいただきます。
この場合、不要になった蛍光灯は「水銀使用製品産業廃棄物」に分類されるので、法規制の対象です。
また、保管基準や契約書、マニフェストについて必要な対応は下記の表の通りです。
▼ 水銀関連の産業廃棄物に対する新たな措置 (画像はクリックで大きくなります)
引用:環境省「廃棄物処理法施行令等の改正(水銀関係)についての説明会・説明資料」
保管に関しては、保管置き場にて「他の物と混合するおそれのないように仕切りを設ける等の措置をすること」が義務化されたので、それに準じた対応が必要となります。
加えて、マニフェストでの対応も必須となっており、産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」が含まれることと、数量を記載することが新たに求められます。
マニフェストに関する変更点&対応の仕方に関しては、こちらのコラムをご覧ください。
【水銀法改正】電子マニフェストの対応はお済ですか?
このように、今までは法律上特別な規制がなかった蛍光灯や水銀電池などにも新たな規制が設けられています。これまで水銀を排出している認識がなかったご担当者様も、ぜひこの機会にご確認いただければと思います。
「水銀使用製品産業廃棄物」の分類
まずは、「水銀使用製品産業廃棄物」から解説していきます。
下記に水銀廃棄物の分類についてまとめましたので、ご覧ください。
▼ 水銀廃棄物の分類 (画像はクリックで大きくなります)
参考:環境省「廃棄物処理法施行令等の改正(水銀関係)についての説明会・説明資料」
「水銀使用製品産業廃棄物」の対象は、蛍光灯や水銀電池などが当てはまります。おそらく、ほとんどの排出事業者の方が関係する内容ではないでしょうか。ちなみに電池品番の最初のアルファベットが「NR」「MR」であれば、すべて水銀電池に該当します。
「水銀使用製品産業廃棄物」の対象はさらに三つに分けられます。下記の表をご覧ください。
▼ 水銀使用製品産業廃棄物の対象 (画像はクリックで大きくなります)
参考:環境省「廃棄物処理法施行令等の改正(水銀関係)についての説明会・説明資料」
まず区分①は、指定されている37の製品に該当するものです。さらに、区分②は表にあげられたものが組み込まれている製品が該当します。ただし、表中で「×」があるものは該当しません。例えば、廃棄する水銀電池やガラス製水温度計は「水銀使用製品産業廃棄物」ですが、蛍光灯や水銀リレーが部品として組み込まれている機器本体は該当しません。そして、区分③は、水銀や水銀化合物の使用が表示されている製品です。
注意すべきポイント
ここで、「水銀使用製品産業廃棄物」について、確認しておきたいパブリックコメントがあるので、ご紹介します。
蛍光ランプ等の取り外しが求められる場合、事前の解体作業等が発生し、従来よりも廃棄物処理に時間を要することになるため、取り外さずに処理を行うことも可能であるかを明確にしたい。
(出典:環境省「水銀廃棄物に係る「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」等に対する 意見募集(パブリックコメント)の結果について(お知らせ)」より引用)
下線部にあるよう、水銀使用製品が容易に取り外せる廃棄物に関しては注意が必要です。
不適正処理を防ぐには
「水銀使用製品産業廃棄物」で重要なのは、現場スタッフの方の水銀に関する認識度です。「水銀使用製品産業廃棄物」は、製造に伴って排出されるばいじんや鉱さい等の廃棄物と違い、突発的かつ単発で発生する廃棄物が多いかと思います。
すると手順や判断基準が決まっていなかったり、古かったりして、水銀が含有されているにもかかわらずその他の廃棄物と混ざり、区別がつかないまま普通の廃棄物として委託され、さらに不適正な処理がされてしまう可能性があります。
それを防ぐ方法として、排出されることがわかっている水銀使用製品産業廃棄物については、写真と判断方法を添えて置き場に掲⽰したり、ファイリングしたりしておくことをおすすめします。
環境省が公表する「主な水銀使用製品リスト」にはかなり詳しく掲載されているので判断の参考になります。また、排出予定はなくとも、環境管理の研修等に水銀についての説明を追加して現場スタッフの方の知識の底上げを行うことをおすすめします。このように、全社的に水銀廃棄物へのアンテナを⾼くし、誤った廃棄を防ぐ必要があります。
また、企業だけでなく、一般家庭の方からもよくお問い合わせいただくのが、水銀体温計等が破損した場合の対応です。中身の金属水銀は放置すると蒸発して有害な水銀蒸気となるため、破損した水銀使用製品廃棄物は即座にガラス瓶やポリ袋に入れて水銀の飛散・流出を防ぐことが重要です。
「水銀含有ばいじん等」の分類
続いて、「水銀含有ばいじん等」について解説します。今一度下記の表をご覧ください。
▼ 水銀廃棄物の分類 (画像はクリックで大きくなります)
参考:環境省「廃棄物処理法施行令等の改正(水銀関係)についての説明会・説明資料」
「水銀含有ばいじん等」は、15mg/kgを超える水銀を含有するばいじん、燃え殻、鉱さい、汚泥、廃酸、廃アルカリを指します。「ばいじん等」という名称ですが、ばいじん以外の廃棄物も該当するため注意が必要です。これらは、一部の排出事業者に関係する内容です。
「今までもそれらを定めている法律があったのでは?」と思われる方もいらっしゃると思います。おっしゃる通り、水俣条約を締結する前から重金属等が一定量超えて検出されるものを特管産廃(特定有害産業廃棄物)とする規定がありました。
ただしそれは、下記の表にあるように、施行令に規定された施設から排出されたものです。
▼ 「廃水銀等」の対象施設 (画像はクリックで大きくなります)
引用:環境省「水銀廃棄物ガイドライン」
規定された施設とは、例えば、水銀の精製施設や、化学製品製造業のろ過施設などが該当します。
今回の改正では、 上記では対象外となっていた施設から排出される廃棄物であっても「水銀含有ばいじん等」が新たに定義され、普通産廃として処分又は再生の基準が追加されています。
自社廃棄物の水銀含有量の確認を!
また、今回の改正により、今までの処理や再生の基準では委託できない廃棄物が出てくる可能性があります。
担当者の皆さまは、自社の廃棄物の水銀含有量を把握していらっしゃるでしょうか?特に前任者から言われた通りに引き継いでいる方は、 今一度、分析表の確認をおすすめします。
加えて、分析方法も指定されているので注意してください。
業許可や委託する際の注意点
許可の変更不要の落とし穴
最後に、「水銀使用製品産業廃棄物」「水銀含有ばいじん等」の業許可や委託する際の注意点について解説します。
平成 29 年 10 月1⽇の時点でこれらの廃棄物を取り扱っている場合、収運や処分の変更許可申請は不要です。ただし不要だからといって、何もしなくて良いということではありません。「処理基準の追加はあるが、業許可の変更は不要」という条件は、実は排出事業者にとってリスクになり得ます。
どういうことかというと、どちらの廃棄物にも、平成 29年の改正で中間処理及び最終処分・再生に関する新たな基準が追加されました。許可の変更が不要ということは、平成 29 年 10 月1⽇以降に自社が委託する処分業者がこれらの基準を満たしているかどうかを、自らで判断しなければならないということなのです。
今回追加された基準と処分業者から提出される情報を比較し、その提出される情報の信ぴょう性も考慮しつつ、委託しても良いか判断する必要があります。時間がかけられない、リスクが⾼すぎると感じる方は専門性の高い業者などにお任せするのも一つの選択です。
また、注意が必要なのは「変更許可は不要」の意味です。こちらは、現在その廃棄物を取り扱っている許可証が有効であれば変更は不要という意味であり、その業許可の期限が切れた際は新たな基準での許可を「更新」する必要があります。
求められる心構え
以上が、この度の法改正にあたり、「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん等」について排出事業者様が注意しておくべき内容です。
足早に法整備が進んでいる水銀廃棄物。廃棄物担当の方から現場スタッフの方まで、幅広くそれぞれの役割に応じた知識を身につけ、対応をしていく必要があります。
このコラムをきっかけに、今一度、社内体制を見直してみることをおすすめします!
条例を調べたり、自治体への問い合わせを面倒と感じる方へ
Kayo Toyama 環境コンサルティング事業部 マネージャー
在学中は文学部言語表現学科に所属し、文章表現、会話表現から古典文学まで幅広く学ぶ。 現在は、“お客様の抱えている問題を解決するお手伝い”をしたい!という考えのもと、大学時代に学んだ文章表現のノウハウを生かし、自社サイトや資料等を使ったお客様への情報発信を担当。