実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(前編)

実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(前編)

コラムCOLUMNS

  • その他
                 

実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(前編)

前回のコラムでは新任のご担当者様に向けて、実地確認の基礎的なポイントを解説しました。今回は、もう何度も実地確認は行っている!という上級者の方向けに、いつもより更に一歩踏み込んだ実施確認を行うポイントを解説していきます。この機会にぜひ実地確認の項目や方法の見直しをおすすめいたします。ボリュームが多いので前編と後編に分けて、詳しくお伝えします。

▼新任のご担当者様向けの実地確認については、以下でご紹介しています。▼
【新任担当者向け】初めてでも安心!ここだけは押さえたい実地確認3つのポイント

上級者向け実地確認のポイント~事前準備編~

前編では、実地確認に向かう前の事前準備に焦点を当てて、解説します。

初級者編でもお伝えしましたが、実地確認は現地へ赴く前に、事前に情報収集をしておくことが重要になります。現地では書類や施設、車両の確認、ヒアリング等、多くの時間を要します。

事前に情報を集め、当日はどこを重点的に見るか、ヒアリングするかを決めておくと効果的な実地確認が可能となります。

ポイント1:行政のノウハウを参考にする

実地確認の進め方として、行政のノウハウを参考にするという方法があります。

特に参考にしていただきたいのは、平成28年6月に発表された「食品廃棄物の不正転売防止に関する 産業廃棄物処理業者等への立入検査マニュアル」(以下、マニュアル)です。

 

 

 

 

これは、排出事業者向けではなく、各地方行政が立入検査を行う際のマニュアルであって、対象は食品廃棄物に限定されています。しかし、法の規制をもとに適正処理が行われているかどうかを確認するための手法としてマニュアル化された内容は、排出事業者にとって大いに参考になる内容です。「立入検査」を「実地確認」と読み替えるだけで、排出事業者がそのまま活用できる具体的ノウハウが多く記載されています。

食品廃棄物不正転売は発覚まで誰もが予想しなかった事件です。この事件を受けての対策マニュアルなので、立入検査の内容もかなりシビアなものになっています。

下記のポイント2・ポイント3の中で、いくつか特徴的な内容をピックアップしますので、こうした内容を取り入れて、少しずつ実施確認の手順に取り入れていかれることをおすすめいたします。

ポイント2:過去の確認結果を参考に、計画を立てる

先ほども述べましたが、限られた時間で、適切な確認を行うためには、重点的かつ効率的な実地確認の実施が求められます。そのためには、事前準備を欠かすことはできません。

マニュアルでは、所在地や代表者、許可内容等の基礎的な事項に加えて、「直近の立入検査で重点的に検査した事項とその結果」「行政指導の改善結果」といった内容があります。これは実地確認でも、過去の確認結果を事前に参照し、前回不十分と感じる部分があれば、その部分を重点的に確認するなど、おおよその計画を立てる必要があります。

例えば、前回「未処理廃棄物の保管量が少し多いのではないか?」と確認した場合に、相手がどのように答えたかを記録し、事前に読み返します。「今はちょうど繁忙期なので、一時的に保管量が多いです。」と答えられたならば、次回は実施時期を少しずらすという対応が有効です。1年後、時期をずらしたとしても、同じ状況が続いていれば、慢性的に処理が追いついていない可能性があります。

このように、事前準備を適切にしておけば、スケジュール調整の段階から動きが変わってくる場合があるのです。

ポイント3:事業場の外観や内部の様子、周囲の状況等を確認する

詳細な確認に入る前に、大まかに事業場の外観や内部の様子、周囲の状況等を確認することも大切です。

マニュアルには「検査に関して先入観があってはならないが、これらは経営状態の健全性を図る指標としてもとらえることができる」と記載されています。この際、過去の記録や写真と比較をすることも重要です。

具体的な内容としては、「事業場や設備の老朽化、損壊はないか」を確認し、老朽化が激しい・修復されていないといった設備がある場合は、財務状況が芳しくなく、設備投資を行う余裕がないことが予想されます。

また、「常日頃から操業している状態か」という項目も重要です。資金繰りが厳しくなってくると、中間処理を適正に行う余裕すらなくなってしまう場合があります。受託はしても処理せず自社敷地内の目立たないところにため込んだり、そもそも施設自体に持ち込まずに不法投棄するといった事態も想定されます。

不法投棄で行政処分を行った行政の公開資料を見ると、平日の昼間に施設が稼働していない状況が続いていたり、従業員の数が極端に少なかったりといった状況が立入によって確認され、詳細な調査に移行したところ不法投棄が発覚するというケースがあります。

いかがでしたでしょうか?今回は発展的な実施確認のなかでも、事前準備の内容をお伝えしました。

後編では、実際に実地に入ってからの細かい確認ポイントを解説していきます!

▼後編の記事は、こちらからご覧ください。▼
実地確認のマンネリ予防!上級者向け実地確認のポイント(後編)

 



Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。