- 法改正
RCFの安価な破砕に潜む罠!委託時に気を付けるべきこと
※2017年1月10日執筆時点の情報です。
近ごろリフラクトリーセラミックファイバー(以下RCF)の処理についてお問合せをよくいただきます。平成27年11月1日から特定化学物質第2類物質・特別管理物質に追加されたためと考えられます。今回は、RCFについて廃棄物管理担当者として気を付けることを解説いたします。
目次
労働安全衛生法の改正!廃掃法への影響は?
RCFとは
正式名称をリフラクトリーセラミックファイバーといい、セラミックファイバーの種類のひとつです。
セラミックファイバーは、アルミナ(Al₂O₃)とシリカ(SiO₂)という物質を主成分とした人造の無機質鉱物繊維です。
1,000℃以上の熱にも耐えられるため、耐火材・断熱材として使われています。また、天然の無機質鉱物繊維であるアスベストの代替品としても使用されています。
無機質鉱物繊維である点や耐熱材として使用できる点、繊維が非常に細かい点が似ており、(成分は異なりますが)「人造か天然かの違い」と考えておくと分かりやすいかと思います。
改正の概要
RCFについて厚生労働省にて以下のような検討がされ、法律の強化が行われました。
~ナフタレン及びリフラクトリーセラミックファイバーを規制対象とし、製造・使用者に健康障害防止措置を義務付ける必要があると結論~
厚生労働省では、 化学物質による労働者の健康障害を防止するため、発がん性などの有害性が疑われる化学物質のリスク評価を行っています。
このほど、「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」(座長:菅野誠一郎(独)労働安全衛生総合研究所 研究企画調整部特任研究員)を開催し、有害性評価とばく露評価によってリスク が高いと判断された「ナフタレン」と「リフラクトリーセラミックファイバー」について、具体的な健康障害防止措置の検討を行い、 報告書をまとめましたので、公表します。
検討の結果、(略)リフラクトリーセラミックファイバーとこれを含む製剤その他の物を製造し、または取り扱う業務について、「特定化学物質障害予防規則」の「管理第2類物質」と同様に、作業環境測定の実施、局所排気装置の設置などの事業者に対する規制が必要であるとされました。さらに、リフラクトリーセラミックファイバーを断熱材などとして用いた設備の施工・補修・解体などの作業については、その作業の特性を勘案し、上記規制に加え、呼吸用保護具の着用を義務付けるなど、規制化が必要であるとされました。
新たに「RCF」(と「ナフタレン」)に有害性が認められ、健康障害防止措置の規制対象になったため、RCFやRCFを含む製剤を取り扱う事業者は行うべきことが増えます、といった内容です。
廃掃法でのRCFの取り扱いは変わらず…。ただし!
上記は“労働安全衛生法”(以下労安法)での取り決めです。では、廃掃法でRCFについてどのような規定があるのでしょうか?実は、現状では特に決められていません。特管廃棄物にも該当せず、基本的には普通産廃として処理委託します。
ただし、私は廃棄物管理においても油断は禁物だと考えています。
廃掃法での規制が無くても”油断禁物”な理由
発がん性があるかもしれないから
RCFに対するヒトへの健康影響データは少ないですが、動物実験などが世界各国で行われており、国際がん研究機関(IARC)によると、吸入による発がん性の可能性がある物質として、「2B:ヒトへの発がん性があるかもしれない」と分類されています。
これは、グループ「1」のアスベストよりは、がんになる確実性は低いようです。廃掃法で規制されていないのはこのあたりが要因かと思います。
- グループ1 :発がん性がある
- グループ2A :おそらく発がん性がある(probably)
- グループ2B :発がん性があるかもしれない(possibly)
- グループ3 :発がん性を分類できない
- グループ4 :おそらく発がん性はない
(※ここでの発がん性のリスクは、発がんの強さではなく発がんの可能性の確実さを指します。)
廃掃法の規制がないのは追い付いていないだけ?
アスベストと比べれば発がん性のリスクが低いとは言え、労安法では規制されるほどのリスクのあるRCF。なぜ廃掃法では規制されないのでしょうか?この疑問は労安法の規制内容を見ていくとますます深まります。
労安法の規制対象の代表的なものは以下の通りです。
また、上記の対象に対して行う発散抑制措置は、「作業者が粉じんをいかに吸いこまないか」に焦点を当てた内容になっています。
規制対象である「RCFの取り扱い」と「RCF廃棄物の破砕」とは何が異なるのでしょうか?破砕すると非常に細かな繊維となり、人間の肺に入り込み、発がんする可能性がある…という部分では同じではないでしょうか?
法律が追い付いていないだけで、人が吸いこまないような措置が必要なのは変わりないように思えます。
排出事業者がとるべき現実的な対応方法
溶融処理で無害化または直接埋め立て処理
それでは、現状行われている対応をもとに現実的にどうするべきかをお伝えします。
健康障害防止対策の観点から、廃棄物処理業者では、飛散性アスベストと同じ形態ように2重袋で溶融処理のリサイクルを行うのが一般的です。または、中間処理をせずに直接埋立処理という対応もおすすめです。
委託時に注意すべきポイント
安価な「破砕」には要注意
RCFの極端に安価な破砕処理は今一度、見直すことをおすすめします。なぜなら、発がんの可能性があり、労安法で規制されるようになったRCFをコストをかけず処理をしているとなると、処理の適正性に不安を感じます。ある程度知識のある処理業者、適正処理に努めている処理業者であれば溶融や埋め立て処理という選択になるかと思います。
CSRの観点から
昨今では、自社だけでなく、サプライ・チェーンまで包含した CSR の取り組みが盛んになってきています。排出事業者としては、溶融リサイクルや直接埋立処理は破砕に比べると、コストアップに繋がりますが、処理を委託する処理業者に対して、健康防止対策の視点が必要ではないでしょうか?
法改正に対応できていますか?
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Hiyoyuki Mizuno 環境コンサルティング事業部 部長
入社後は、中部地区において大手製造業の処理困難物のソリューションを数多く手掛ける。その後、‘12年に福岡県の企業にて資源リサイクル事業の新規立ち上げプロジェクトに専門家として8ヶ月間参画し、リサイクルルートの構築と排出企業へのソリューション提案の教育支援をする。支援期間終了後、そこで築いたネットワークを活かし、福岡事業所を立ち上げ、現在は西日本エリアを含め広範囲を対応。「コンサルティングは机上でなく現場から」を信条とし、現場で起きている問題の解決を大切にしている。