- ケーススタディ
- その他
災害時の対策は万全?廃棄物担当者としておこなうべきこと
近年大規模な震災が各地で発生しています。
被害に遭われた皆さま、該当する地域の皆さまには改めて心よりお見舞い申し上げます。そして、安心して生活できる環境が整いますことを心よりお祈り申し上げます。
震災や豪雨等の災害をきっかけに、自社の災害対策を見直されている方も多いのではないでしょうか?
今回は、“廃棄物の処理ルート“という観点で、行っておきたい対策をお伝えいたします。
目次
一般的な災害発生時の対応
例えば……
・災害発生時の自社工場内での安全確保
・災害後の設備機器・建物への被害状況の確認と復旧修理 etc…
まずは、安全を確保し、その後はいち早く工場を再稼働できるようにします。BCP(事業継続計画)を取り決めておく等、各工場で何らかの対策がなされているのではないでしょうか。(そんなものあったっけ?と思われた方は要注意!ご自身の安全のためにも確認してください!)
このあたりは、すぐにイメージしやすいかと思います。また、計画等は別の部署の方が管轄されていることが多いかと思います。
廃棄物が処理できない!長期間保管できない場合は特に注意!
では、廃棄物担当者としての緊急時の対応は想定されているでしょうか?
前述の災害時の備えは、自社内における対策です。案外見落としがちなのは、『委託業者の被害』です。災害の影響度は地域によって差が出ます。遠方の処理会社へ廃棄物を委託している場合は、自社の地域は被災していなかったとしても、委託先が被害に遭っていることは十分に考えられます。
熊本地震での大手自動車メーカの事例
震災の際、自動車部品などの工場が被害を受けた影響で部品の供給が追い付かず、各地方の次工程の工場を段階的に停止するなど、最終的な製造にまで影響が出たというニュースを目にしたことがあるかと思います。
こちらは、部品の仕入れや出荷などの製品生産についての事例ですが、廃棄物の排出に関する取引でも当てはまる部分があります。
廃棄物を委託している処理工場が深刻な被害を受けた場合、自動車部品の工場で製造ができなくなったのと同様に、廃棄物処理委託を継続して行うことができなくなります。
すぐに復興できるレベルの被害であれば影響は少なくすみますが、復興が困難な場合、新しく別の処分業者に委託をする必要が生じます。
行政の処理ルート構築:南海トラフ地震の事例
行政では、本来使用する処理ルートが使えない時の対応方法をあらかじめ考えています。(※一般廃棄物の処理責任は行政にあります)
例えば三重県では、南海トラフ地震等の大規模災害が発生した場合に備え、「災害廃棄物処理計画」を策定しています。(三重県HP:「三重県災害廃棄物処理計画を策定しました」)その中で、災害廃棄物処理支援という民間処理事業者の応援も含めた応援体制をとることが計画されています。
緊急時は、迅速な判断と対応が求められます。行政では、地域住民の健康・衛生を守るライフラインを確保するために、この計画であらかじめ被害を想定し、対応策を決めることで、万が一に備えています。
リスクの高い廃棄物…。緊急時に備えて対策を
民間企業の場合、工場を稼働したり、事業を行ったりする以上必ず廃棄物が発生するはずです。
もし自社工場に被害がなかったとしても、委託先が被害を受けることで、廃棄物の処理がボトルネックとなり生産が滞ってしまう可能性も、ありえないとは言い切れません。
性状の変化が激しい廃棄物には特に注意!
特に、毎日大量の廃棄物が発生する・性質的にそのまま置いておくと危険があるなど、一時保管しておくことが難しい廃棄物を排出する企業の方は、いつも委託している処理業者とは別の委託先を確保しておくことを強くお勧めします。できることなら、ある程度離れた地域やいつも委託している地域と異なる場所にするのが、リスク分散として望ましいでしょう。
処理困難通知にも対応できますか?
また、処理業者は、万が一稼働できないような事態になってしまった場合、「処理困難通知」を排出事業者に向けて発行します。
処理業者から「処置困難通知」が届いたら、どのように対応するか等の手順は決まっていますでしょうか?
詳しくは、以下のコラムからご確認いただけます。
(関連コラム:【緊急事態への対応方法】処理困難通知が来たらどうする? )
各会社で自社の状況に合わせた対策を考える必要があります。
災害で壊滅的な被害を受けたにも関わらず、日頃の準備が功を奏し、全員無事に避難され、いち早く工場復興をされた例もあります。
緊急事態に役に立つのは、日頃の備え(計画)です。事前に緊急時の初動のために「何をすればいいのか」を考え、備えておくことが大切ですね。それと同時に、自社だけでなく、委託先が被災した場合の対策も立てておく必要があることは、お伝えしたとおりです。
今一度、災害時の被害を抑えるためにどんな対策をする必要があるのか、見直してはいかがでしょうか?
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。