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御社は大丈夫?親子会社・グループ会社の排出事業者責任
※法改正があったため最新の情報に更新しました。2017年6月30日時点の情報です。
親子会社間で廃棄物の管理をする場合、排出事業者の責任はどうなるのか判断に困ることはありませんか?
実は、親子会社間における廃棄物の処理に関して改正が行われました。
今回のコラムでは、現時点での判断のポイントと、最新の改正について解説していきます。
目次
分社化する企業の増加を受けて改正
2016年10月28日、「第6回中央環境審議会循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会」で、このような議論がされていました。
<親子会社間における自ら処理の拡大>
○ 近年、企業経営の効率化の観点から分社化等が行われることが増加している。排出事業者として、産業廃棄物処理業の許可なく「自ら処理」ができる範囲は、法人単位であるため、分社化等により、従前行うことができた「自ら処理」ができなくなる事態が発生している。
○ 分社化等の後は、排出実態が変わらないにもかかわらず、産業廃棄物処理業の許可を取得するか、産業廃棄物処理業の許可を受けた処理業者に委託しなければならないこととなっている。親会社が子会社に対する十分な支配力を有しており、従前そうであったように、子会社があたかも親会社の一部門のような関係にある等の一定の要件に適合する場合には、親会社と子会社を一体のものとして取り扱うための措置を検討するべきではないか。
○ また、親会社と子会社を一体のものとして取り扱う場合には、環境上適正な産業廃棄物の処理を推進する観点から、当該親子会社間における排出事業者責任を共有することや、親子会社内外の廃棄物について明確化する等の措置が必要ではないか。
このように記載されていますが、皆さんはどう感じるでしょうか?
「そもそも分社化後の廃棄物の取り扱いに関して、あまり気にしていなかった…。」という方も案外多いのではないでしょうか?
現在、上記の内容に関して改正が行われ、公布された段階まできています。今回はその辺りを整理してみましょう。
排出事業者の単位は法人
廃掃法の「事業者」という定義が社内で曖昧になっていませんか?
分社化、カンパニー制をとっている企業は特に注意が必要です。廃掃法上では「事業者」は法人ごととされており、別法人の廃棄物は産業廃棄物処理業許可が無ければ受け入れることができないためです。
親子会社間であっても処理の委託は違法
「過去同一会社だったから」、「持ち株会社だから」、「親会社と子会社だから」、といった事情が考慮されるわけではありません。法人間での廃棄物引き渡しは「委託」とみなされます。
● 工場内の1工程を分社化したA社の場合
例えば、1つの工場敷地内でいくつもの行程があり、それに伴う部門も複数が存在しているA社の場合。1つの経営判断として、ある部門を分社化してB社を作りました。すると、今まで同一企業として全ての部門で共有の置き場に排出できていたものが、別法人となることによって、B社では今まで通りの利用はできなくなります。
そのままの管理方法を続けていると、廃掃法違反です。
なぜなら、A社は、自社の置き場にB社の廃棄物を受け入れ、自社の廃棄物として排出している状態だからです。これは無許可で他人の廃棄物を引き取ることになります。A社は無許可営業、B社は無許可業者への委託にあたります。
元々同じ会社、グループ内などの背景から、”身内”という意識があるかもしれません。しかし法律上は”他人”です。この部分を混同することなく、明確な線引きをしなければなりません。
未施行の為、現状では違法
本件に関して、「排出事業者の単位は法人」という定義に変更はありませんが、グループ会社・親子会社間での廃棄物の委託について規制緩和の法改正がなされています。
「親子会社間における自ら処理の拡大」について、以下の案が国会で通りました。
「親子会社が一体的な経営を行うものである等の要件に適合する旨の都道府県知事の認定を受けた場合には、当該親子会社は、廃棄物処理業の許可を受けないで、相互に親子会社間で産業廃棄物の処理を行うことができることとする。」
2017年6月16日には、公布まで行われています。
改正法が施行されれば、特例で認められた会社において、グループ会社間・親子会社間で自ら処理の定義を拡大し関連会社の廃棄物処理もまとめて行えるようになる見込みです。
ただ、具体的な施行規則は決まってないので、今後も注目していく必要があります。また、まだ公布の段階なので、現状では親子会社間での処理委託は違法となっています。
分社化したA社はどうすればいいのか?
別法人の廃棄物を置き場に集約した後、外部委託を行う場合は、置き場の中に法人ごとの専用の保管場所を設け、廃棄物管理を完全に分けます。さらに、B社も直接処理会社と委託契約を結び、B社名義のマニフェストを発行して排出をすれば問題ありません。
しかし、現実的にそれは厳しいと感じられる方も多いのではないでしょうか?
特に廃棄物の置き場は、多くの法人が共存する工場敷地などの場合、法人ごとに専用保管場所を確保することは不可能です。こうした場合に、一定の条件下であれば、置き場の提供ができ、マニフェストの発行に関してはまとめることができます。
平成23年3月に環境省から発行された通知を参考に見てみましょう。
管理票の交付については、例えば農業協同組合、農業用廃プラスチック類の適正な処理の確保を目的とした協議会又は当該協議会を構成する市町村が農業者の排出する廃プラスチック類の集荷場所を提供する場合、ビルの管理者等が当該ビルの賃借人の産業廃棄物の集荷場所を提供する場合、自動車のディーラーが顧客である事業者の排出した使用済自動車の集荷場所を提供する場合のように、産業廃棄物を運搬受託者に引き渡すまでの集荷場所を事業者に提供しているという実態がある場合であって、当該産業廃棄物が適正に回収・処理されるシステムが確立している場合には、事業者の依頼を受けて、当該集荷場所の提供者が自らの名義において管理票の交付等の事務を行っても差し支えないこと。
なお、この場合においても、処理責任は個々の事業者にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約は、事業者の名義において別途行わなければならないこと。
管理する場所がビルと工場という違いこそありますが、集積場所提供という事実は共通しているので、この解釈が適用できるでしょう。
実際にいくつかの自治体に問い合わせても、否定的な解釈は今のところありませんでした。ただし、集積場所とマニフェストはまとめても構いませんが、委託契約は個別に結ぶ必要があります。
また、A社がB社の廃棄物も含めて自ら処理を行っている場合は、産業廃棄物処分業の許可を取得し、B社と委託契約を結ぶ必要があります。もともとA社の施設は外部委託を前提とした施設ではなく、あくまで自ら処理の為に所有している施設である可能性が高いため、すぐに許可を取得して受け入れができる、というわけにはいかないでしょう。許可を取得するには多くのハードルがあります。
法人区分を明確に
このように、”法人の区別が明確かどうか”を念頭に、排出事業者責任の所在を誤りなく整理することは、適正な管理を行うための大前提です。この根っこの部分を間違えてしまうと、どんなに管理を徹底しても違反行為とみなされるおそれがあります。
改正はされましたが、まだ施行されたわけではありません。今は、「現行法を順守できているか」という基準で、見直しをしてみましょう!
うちの工場に法律違反はないだろうか?
大手企業様の事例 法に抵触する可能性合計:145件
このように複雑な判断が必要になる廃棄物の管理。一度プロのチェックを受けてみるというのもひとつの手です。E-VALUEでは監査サービスをご提供しています。
契約書・マニフェスト・行政への報告書類・廃棄物置き場の全数検査を行い、リスクを徹底的に抽出します。その後、監査結果の報告会を開き、報告書の提出と対策のご提案を行います。過去の事例では1社5工場で合計145件もの法に抵触するリスクが抽出されました。決して、レアケースではありません。
まずは、お気軽にお問合せください。
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。