現場のミスを防ぐ”教育”以外の方法

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現場のミスを防ぐ”教育”以外の方法

繰り返される『教育』のイタチごっこ

皆さんは廃棄物に関するリスク低減をするためには、何から始めたら良いとお考えですか?

立場上、セミナーや個別相談を通じて、廃棄物リスクをお伝えする機会が多くあります。とりわけ多いのがマニフェスト管理などの実務面におけるリスクです。マニフェストは日常的に発行されるため、細かなミスや勘違いによる法律違反が非常に多くなります。

管理担当の方自身が実際に取り扱われることばかりではない為、私が話した後は「しっかり教育しないとな…」となる方がほとんどです。

でもちょっと待ってください。今必要なのは本当に「教育」でしょうか?
相談をいただく担当者のお話をよくよく聞いてみると、今までも教育は行っていて、それでも定着せずに『いたちごっこ』になっていることが多いのです。

そんなところに、さらなる情報があるから教育を!としても…しっかり定着するとは思えません。

なぜなら、教えることと定着することにはとても大きな隔たりがあるからです。通常知識のインプット後は反復練習と試行錯誤を繰り返し、時間をかけて定着していくのです。

知識のインプットをしたからといって、いきなり実践となれば、ミスが起こるのは当然です。
人的ミスが許される状態で、練習を繰り返すしかないのです。しかし、業務において人的ミスが許される状態での練習というのは無いに等しいと思います。

ルールや手順を定着させる仕組み

皆さんは、子供に「自転車の乗り方を教えて」と言われたら、どうするでしょうか?

「ハンドルを進行方向に向け、左右の足を交互に踏み込めばいい」という知識だけを伝える方はまずいないはずです。
補助輪を付けて慣れさせ、次は人が支えながら、徐々に手を放していく…というのが一般的でしょう。

廃棄物管理でも、教育の前にまず行動できる「仕組みづくり」をすることが大事です。
補助輪を用意するのです。

我々は、教育のお話をいただくと内容によっては正直に「単発では効果が見込めない」とお話することがあります。

必ず、仕組みづくりや事後フォローをセットにしないと、時間と共に忘れられてしまい、教育の意味がなくなってしまうからです。

仕組みと言うのは、一般的には社内手順だったり電子マニフェスト等のシステムだったり…
社内手順でどこまで規定するかはまちまちなので効果の程は何とも言えませんが、少なくとも「意識向上」を目指すよりは現実的です。

「意識向上」は詰まるところ「精神論」なので、品質の保証は全くありません。
まずは「認識不足や不注意でミスが起こりうる」としたうえで、「水際で食い止める安全装置」を作ることが重要になります。

その後、じっくりと仕組みの必要性や意味を伝えて、意識向上を図っていけば良いと思います。

今まで、教育だけ行って終わりだったところには、必ずリスクが潜んでいます。
気づいていなくても、細かくチェックしていけば必ず出ていきます。

今は、マニフェストの処分終了日欄が違っていただけで、逮捕者が出る時代です。
現場のミスを防ぐために必要なのは、教育だけではなく、確実な仕組みづくりです。

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。