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電子マニフェストシステムが変わる!?既に導入済み企業にも影響が
目次
電子マニフェスト改善案とはどんな内容?
平成30年10月付で環境省から公表されている「電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップ」をご存知でしょうか?
この資料には、2022年に電子マニフェスト普及率を70%まで引き上げることを目標に掲げ、「目標達成のための取り組み」を紹介しています。
取り組み内容は5つありますが、本コラムでは公表資料(3)に記載されている「電子マニフェストシステムの改善」に注目したいと思います。
システム改善ということは、今現在使われている電子マニフェストのシステムが変わるということです。そのため既に導入済みの事業者にも影響があります。
3つの改善項目
①処理業者による「代理予約」機能
②排出事業者の登録を待たずに運搬業者が運搬終了報告できる機能
③カレンダー機能
一つ一つ詳しく見ていきましょう。
①処理業者による「代理予約」機能
資料では「処理業者による電子マニフェスト登録支援」と表現されています。
「電子マニフェストは、紙マニフェストに比べ容易性、汎用性が劣っていることが普及を阻害する一つの要因となっている」とし、排出事業者の負担を軽減するために、処理業者が「仮登録」を行ったマニフェストを排出事業者が承認(本登録)する仕組みを考えているようです。
筆者は、この機能については否定的な立場です。そもそも、電子マニフェストに対して「容易性、汎用性が劣っている」と公式に明示していることに強い違和感を覚えてしまいます。「それを言ってしまっては、おしまいなのでは…?」と、とても残念な気持ちです。
実用面で考えると、電子マニフェストの容易性は紙マニフェストに比べ格段に高いと思います。手書きで全ての項目を記入しなければならないところを、設定さえしておけば数クリックでマニフェストの登録を完了させることができます。郵送のやり取りも不要で、返送されたマニフェストを照合してファイリングする手間もありません。過去の情報を確認したければ検索し、すぐに一覧で出てきます。
強いて言えば、「初期設定」が容易ではないかもしれません。これは新しいものを導入する際、必ずあるハードルなので、電子マニフェスト特有のものでは無いのではないでしょうか?
代理予約が成立するとどうなるのか?
文面を読むと、処理業者が排出事業者との契約や、その時受けた回収依頼の連絡内容などを元に、適切であろう内容のマニフェストデータを予約し、排出事業者はそれを確認して本登録するという形式になりそうです。
この形式、何かに似ていると思いませんか?紙マニフェストで、「ドライバーが持ってくるマニフェストにサインをするだけ」の状態と構図としては全く同じです。
「サインするだけのマニフェスト」を実施している排出事業者の多くは、マニフェストの内容を読まず「処理業者が責任を持って作ってくれているだろう」と考え、内容の確認をあまりしません。そのうちに、年月が経って担当者の交代などもあり、気がつくとマニフェストを読む力がなくなっているということも珍しくありません。
この状態でも、受け取ったマニフェストの内容が問題なければ、まだ良いのですが、こうした管理体制で発行されるマニフェストの多くに不備があることは容易に予想できます。
そもそも、マニフェストの発行義務は排出事業者にあります。承認機能を設けるとしても、それは形式的なものです。排出事業者責任が希薄になってしまうような機能はあまり望ましくないのではないでしょうか?
普及率を高めることも大切ですが、筆者としては本末転倒だと感じてしまいます…。
②排出事業者の登録を待たずに運搬業者が運搬終了報告できる機能
電子マニフェストは排出後3日以内に登録をしなければなりません。運搬業者も運搬終了後3日以内に報告をしなければなりません。殆どの場合、運搬は当日終わるため、排出事業者の登録期限と運搬業者の報告期限が同じになります。
すると何が起こるかと言うと、運搬業者に「排出事業者がなかなか登録してくれないので、何度も登録されているかチェックしたり、催促したりする手間」が発生するのです。
つまり、これをなくすために排出事業者が登録していなくても、運搬業者が前述の①で代理登録したマニフェストの承認(本登録)を待たずに完了報告ができるという仕組みになります。
代理登録に排出事業者の承認がない状態で、マニフェストの登録が進んで行くとなると、『承認』は本当に形式的なものになりそうです。いっそ、ずっと承認しなくてもいいのでは?という思いもよぎるかもしれませんが、それでマニフェスト交付義務違反に問われてはたまりませんので、承認は必ず行いましょう。
③カレンダー機能
これは、法改正により、排出から3日以内の本登録期限に「土日祝日及び年末年始」が含まれないことになったため、カレンダー機能を搭載し、システム上の注意喚起なども適切に扱えるようにするものです。
この機能は、とても良いと思います。
排出事業者責任を全うすることを意識した機能の使い方を
いかがでしょうか?
これらの機能は、まだまだ構想段階で2019年の1年をかけて、システム改善に取り組むそうです。ですので、上記がそのまま実装されるとは決定されていません。
しかし、仮に上記の機能が実装されたとしても、コンプライアンスを徹底し排出事業者責任を全うするためには、①②の機能は活用されないことが得策だと思います。
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。
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