- 委託契約書
委託契約書の表記ミスはどうする??
委託契約書を作成して、両社の押印まで終わったところで、誤字を発見…
こんなことで、ガックリ肩を落とした経験はないでしょうか?
産業廃棄物の処理を委託する際は必ず委託契約書を作成しなければいけません。扱う廃棄物の種類が多ければその数も多く、しっかり見直していたつもりでもミスが起こってしまう可能性はありますね。
では、こういうときはどう対処したら良いでしょうか?今回は、委託契約書の表記ミスに対する対処法を解説します。
目次
訂正内容を書き込み+訂正印が基本
修正箇所への書き込み
委託契約書を訂正する場合は、まず手書きで該当部分に訂正内容を書き込みます。
例えば、住所の一部が間違っているとします。その場合は、間違っている部分を二重線で消し、すぐ上に正しい内容を書きます。
修正箇所への訂正印
次に、訂正印を押します。訂正印は削除する文字に重ねるか、訂正した内容のすぐ近くに押します。
削除だけであれば、二重線で消し、訂正印を押します。
削除がなく、追加の場合は「V」で追加したい内容を差し込みます。
これで終わりではありません。
「◯文字削除、□文字追加」のように、訂正内容を明記
訂正内容のすぐ近くにスペースがあればそこに記載します。
スペースが無い場合は、そのページの余白などなるべくわかりやすい位置に書きましょう。
このように訂正したら、相手方に送付し、相手の訂正印も押してもらいます。
片方の印だけでは、「一方的に訂正しただけでは?」と疑われてしまうので、相手方の合意を示す訂正印を貰う必要があります。
改ざん防止を徹底
ポイントは、訂正箇所以外の改ざんがされないような方法で訂正することです。
これらの方法は、法律などで明確に義務付けられているものではありません。そもそも、委託契約書への押印も慣習的なものであり、直筆のサインなど本人の合意が客観的に分かる方法であれば、契約の成立が認められるようです。しかし、産廃の処理委託契約書は基本的に押印によって契約を成立させているなら、訂正する場合にも印を押すのが適切です。
また、ただ二重線で削除し、内容を記載するだけでは、あとから合意していない内容まで勝手に追記されてしまうおそれがあります。
そこで、「◯文字削除、□文字追加」のように表記することで、合意した部分のみの訂正しか認めないようにできます。
これらの修正方法は、一例であり、先述のとおり明確に法律で決まっているわけではありません。「改ざんがないことを証明できる方法」として一般的に使用されている方法です。その他の方法であってもNGというわけではありませんが、その方法が「改ざん防止」の目的を果たせるかという観点で検討することが重要です。
認印でもいいの?
訂正箇所にも押印が必要となると「もう一度、押印の申請をするのは、ばつが悪いな」と思うかもしれません。相手方の押印も必要なので、社内申請や郵送、先方からの返送の期間を考えると「廃棄物の回収予定日に間に合わないかもしれない」とハラハラすることがあるかもしれません。口頭での契約修正(当事者の合意による諾成契約)も法的拘束力があります。
しかし、修正時の押印は、改ざん防止の観点から、“契約締結時と同じ印鑑”であることが求められるケースもあります。
「会社として、契約内容の変更を認めます」という意味の印鑑なので、契約締結時の決済者が同じ印鑑(社印)を押す必要があるのです。もし、担当者の認印でも良ければ、重要な契約変更が担当者の一存で行われてしまうことにもなりかねません。決済を受けるときは、問題のない契約にしておいて、あとから担当者がおかしな条文を追加したとしても、会社は全く知らない…ということがあってはいけません。
なので認印ではなく、契約締結時の印鑑を使用すればより確実になります。
「だったら、訂正じゃなくて新しく作り直したほうがいいのでは?」と思われた方、お互いに作り直しが良いと判断すれば、それももちろんOKです。一方、訂正印で済ませることのメリットももちろんあります。
まず「契約決済の稟議」、さらに「製本の手間」も省けます。割り印など契約書の製本はちょっとした手間なので、大きな問題ではないかもしれませんね。
次に内容チェックの手間が省けます。訂正であれば、訂正箇所のみをチェックすれば良いのですが、新しく製本された委託契約書の場合、当たり前ですが訂正の痕跡がないキレイな状態になっています。
この状態になると、少しうがった見方をすれば「どさくさに紛れて、変な条件が追加されていないか?」という疑いも生まれてしまうわけですね。
実際に大手企業では、委託契約書の作り直しとなった場合には、振り出しに戻って法務部のチェックを受けなければならないというルールになっていることもあるようです。
最後に、作り直しのデメリットとして「新たに印紙を貼らなければならない」があります。委託契約書をもう一度結び直すわけですから、(契約金額を変更する修正でなければ)作り直しの委託契約書にも、初めて契約するときと全く同じ額の印紙が必要です。200円などの少額印紙ならばよいですが、高額印紙が必要な委託契約書になると、ちょっとためらってしまうかもしれません。でも、高額印紙を貼る契約というのは、それだけ契約金額が大きいということなので、重要な契約にはよりきっちりとした対応として、作り直しが良いかもしれませんね。
ちなみに、契約期間の中途における契約内容の変更は、原本修正、契約書作り直しではなく「覚書の締結」が一般的です。覚書は作り直しに比べて、信頼性が劣ると思われている方もいるようですが、法律上の効果は変わりません。原契約の一部を追加・変更する内容であったとしても、覚書に原契約と同じ署名・押印があれば、それは「変更契約」となり、契約書と同じ効果があります。
電子契約なら訂正も簡単
ここまでお伝えしてきた委託契約書訂正の手順は、面倒に感じる!というのが正直なところかもしれません。こうした場合は、電子契約に切り替えてしまうのもオススメです。電子契約であれば、訂正箇所をデジタルに編集して、履歴が分かる状態で、お互いが簡単に合意できます。この方法は厳密にいえば、訂正ではなく修正した委託契約書を結び直すことになります。
電子契約は、どのシステムを使うかにもよりますが、紙に印刷した委託契約書を訂正するときのように、二重線で消したり「◯文字削除」というような訂正の仕方はしません。編集したデータの他に、今までの変更履歴も保存されるので、二重線や「◯文字削除」のような表記がなくても、変更箇所がわかりやすく読み取れるのです。
そして、電子委託契約書には収入印紙の貼付義務がないので、委託契約書を作り直したとしても追加で印紙代がかかることはありません。
収入印紙は、印紙税法で定められた特定の書類を作成するときに税が課せられるというものですが、そもそも紙の書類として作成しなければ全く同じ内容のものでも課税対象にはならないのです。
ということは、紙の委託契約書におけるジレンマでもあった「高額印紙の委託契約書を締結し直すのは負担」と「重要な契約は簡易的な修正でなく、きっちり結び直したほうが良い気がする」は、きれいに解消できますね。
最近はDXも注目されているので、電子契約に踏み出して、効率化を測ってはいかがでしょうか?
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。
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