- 法改正
シリーズ「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の廃棄物管理への影響
第1回 促進法ってなに?
「プラチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が、2022年4月1日から施行されています。(以下「プラスチック資源循環促進法」と表記)この「プラスチック資源循環促進法」では、その名の通り、プラスチックの製造から使用、再資源化もしくは廃棄まで、プラスチック製品のライフサイクル全体に対する取り組みが定められています。
法律の対象は、プラスチック製品の「製造者・提供者」「消費者」「国・都道府県・市町村」「廃棄物としての排出事業者」など、多岐にわたります。現在公開されている資料では、国や行政の役割など、その他の対象に関する内容も多く、「産業廃棄物の管理部門としては何をすればよいのか?」が分かりづらいこともあり、お客様から質問を受けることがあります。
今回は、法律全体の概要に加えて「廃棄物の排出事業者」としての取り組みについて、「何をする必要があるのか?」「今までと変わることは何か?」「罰則はあるのか?」など、実務に関わる部分をシリーズで解説します。
「促進法」とは?
法の概要を説明する前に、まず前提としてこの法律が「促進法」であるという点を説明します。法律名に「促進」という単語が含まれている法律は多くあり、略称として「〇〇促進法」とされる傾向にあります。この「促進法」は明確な定義付けがされているわけではないと思うのですが、私としては「規制(禁止されていることをすれば罰する)ではなく、促進(より良い行動を推奨する)のための法律」といった印象です。
例えば、廃棄物処理法は「規制」中心の法律です。例えば、不法投棄をすると、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方。しかも法人の場合は、3億円以下の罰金という厳しい規定があります。
一方、「促進法」は、「こうした行動がより望ましい」というプラスの活動を推奨する内容が殆どで、(全く罰則が無いわけではありませんが)基本的に、違反者を罰するような目的で作られてはいないと感じます。
「促進法」としての位置づけのプラスチック新法
「プラスチック資源循環促進法」についても同様で、法律の本文を読むと「事業者及び消費者の責務(第4条)の条文では、軒並み「努めなければならない」という表現が使用されています。「しなければならない」ではなく「努めなければならない」というのは比較的穏やかな表現です。
この表現は、努力義務とも言われ、法律上求められていることではあるものの、通常は強い罰則が無いために絶対的な義務ではないという解釈が一般的です。
廃棄物処理法では、「実地確認」と言われる委託先の処分場を定期的に訪問する義務に対して「努めなければならない」という表現が使われているため、努力義務と言われます。ただし、条例で具体的に義務化している自治体も多くあるのでご注意ください。
廃棄物処理法第12条第7項
事業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
以上のことから、
「プラスチック資源循環促進法」は、(少なくとも廃棄物の排出事業者に対しては)絶対的な義務ではなく、よりプラスの活動に取り組むための指針のような捉え方をしていけばよいと考えられます。
まずは、促進法の位置づけを確認しました。
次回以降からは法律の概要をチェックしていきましょう。
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。
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