- ケーススタディ
委託した廃棄物が返品に!法的に正しい対応は??
ある日、いつものように廃棄物の回収を依頼し、運搬車両を見送ったところ、程なくして「分別ができていないので、中間処理業者の検品で受取拒否されてしまった。このまま持ち帰って返品する」と連絡が…
こうしたケースは、決して珍しいことではありません。
特に、廃プラや木くずなどのコンテナで回収されるような廃棄物は、多くの従業員がコンテナに廃棄物を投入し、分別が徹底できていないことも多いです。
こうした場合の対処はどのようにすれば良いでしょうか?
発行しているマニフェストはどうする?
まず、元々発行していたマニフェストの取り扱い方です。
一度発行してしまったので破棄するわけにはいきませんが、中間処理、最終処分も行えないという状態ですね。
この場合、運搬まで使用したマニフェストの備考欄などに「返品によりB2票以降は不使用」などと記載し、その後のマニフェストが使用されていない理由が明確に分かるようにしておきます。
電子マニフェストの場合は、「取消」をします。
この際、電子マニフェストのシステム上では取消理由を記載する箇所がありません。より安全を見るなら、まず備考欄に返品によって処理が行われなくなった旨を追記する「修正」を行って、その後に取消の操作をします。
こうすれば、取消前のデータとして備考欄が残るので、万が一行政のチェックが入っても、正当な理由があって取り消したことが証明できます。
返品時の運搬は?委託契約書は必要?
返品時も基本的には運搬業者に委託することになると思います。
自社車両で取りに行ければ、自社運搬になりますが、返品とはいえ運搬を委託するとなると契約やマニフェストはどうなるか?という疑問がでてきます。
結論から言えば、運搬の委託になるので委託契約書の締結とマニフェストの発行が必要です。かなり杓子定規的な法律論ではありますが、行政に確認すればやはり必要といわれるでしょう。
ただ、返品対応の運搬をピンポイントに強く取り締まるか?というと、そこまではされないのではないか?とは個人的に思いますが…
とはいえ、最も安全なのは厳密に対応することなので、適切な対処方法を知っておきましょう。委託契約書が必要と言われても、即座に準備できるものではありません。
突発的な返品対応の場合は、覚書等を後付で交わすという対応が精一杯であり、現実的だと思います。
覚書には、「中間処理業者を出発点として、自社を目的地とする」という内容を加えます。運搬料金についても、明記しましょう。
突発的な対応を防ぐには、あらかじめ委託契約書に返品時の対応方法を記載しておく方法もあります。
「契約外の廃棄物が混入していた場合などは返品する」という文言を入れた上で上記の覚書と同様に、出発点、目的地、運搬料金を予め設定しておきます。すべての契約書に入れる必要はありませんが、分別が徹底できるか確約できない物等には返品時の対応についての内容を盛り込んでおくことをお勧めします。
マニフェストは?
返品の際のマニフェストについても「運搬委託なので発行するように」と指導する行政が多いようです。
紙マニフェストであれば、排出事業場を中間処理業者の住所とし、目的地は自社の住所を記入すればOKです。
では、電子マニフェストではどうでしょうか??
この場合でも対応は紙マニフェストと同じです。
排出事業場は複数登録できるので、中間処理業者の住所をあらかじめ登録し、マニフェスト発行画面で選択します。
運搬の目的地については少しだけ複雑です。
そのままでは、運搬の目的地に自社の住所が設定できません。運搬の目的地は、原則許可業者の住所でなくてはならないので、処分業者向けのアカウントが持つ「加入者番号」「公開確認番号」がないと設定できません。でも、排出事業者はこれらを持っていない…
この場合は、「報告不要業者設定」を行います。
この報告不要業者設定から、自社の住所を設定しておけば、マニフェストの発行時に運搬の目的地候補として選択できるようになります。
報告不要業者として設定、発行されたマニフェストは、その後の処分終了報告等「処理業者として行わなければならない報告が不要」になりますので、運搬さえ終了すれば、電子マニフェストとしての処理は完了です。
この様に少々ややこしいですが、紙でも電子でも返品対応のマニフェストは発行できます。
しかし、面倒であることには変わりはないので、分別が徹底されて、返品対応がないというのが理想ですね。
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。