SDGsウォッシュのリスクとは?【シリーズSDGs-4】

SDGsウォッシュのリスクとは?【シリーズSDGs-4】

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SDGsウォッシュのリスクとは?【シリーズSDGs-4】

前回は、「SDGsのターゲットと現状を見比べること」が必要だと紹介しました。コラム「SDGsの第一歩!ターゲットとゴールから現状を把握【シリーズSDGs-3】」参照
全くのゼロスタートではなく、現状の事業活動でも17のターゲットに関連する活動があるかもしれないので、まずはそれらの活動がどの程度のレベルと言えるのかを評価しましょう、という内容でした。

今回は、現状の把握と結び付けをした後に陥りがちな「SDGsウォッシュ」についてお伝えします。
「SDGsウォッシュ」に陥ってしまうことは、非常に大きなリスクです。

「〇〇ウォッシュ」は上辺だけの対応を揶揄する言葉

「SDGsウォッシュ」とは、「上辺だけの対応で、SDGsに取り組んでいると見せかけること」を指します。
「〇〇ウォッシュ」という言葉は、壁の汚れを白く塗りつぶすことでごまかす「ホワイトウォッシュ」から来ていると言われています。 例えば「Greenウォッシュ」は、「上辺だけの環境配慮」を意味します。

・「環境に配慮した再生資源を使用しています」と言いつつ、実際のリサイクル工程では過剰な資源やエネルギーを投入している…
・「100%リサイクルしています」という処理施設が、実は需要が殆どない製品を作っていて、リサイクル後にもう一度廃棄するという状態だった…

このように、「環境に配慮している」とアピールしていても、少し踏み込んで確認してみると、実態が全く伴っていなかったというものが例として挙げられます。

「SDGsウォッシュ」も同様に、実態の伴っていないアピールがあった場合に、バッシングの言葉として使われます。

 SDGsウォッシュに陥る原因① 想定範囲が狭い

「SDGsウォッシュ」という言葉は、単純な誇張表現に対しても使われます。
数値的な根拠もなく、曖昧な表現や画像を駆使して良いイメージを与えようとしていたり、法律で禁止されている事項をさも自主規制しているかのごとくアピールしたりすること等が該当します。

こうした誇張表現は、意図を持って行われることなので、「指摘されても仕方がない…自業自得」と言われてしまうものです。
一方で、SDGsウォッシュには企業側も気が付かないような落とし穴が存在する場合があります。SDGsは、その範囲の広さ故に、ウォッシュのリスクが高く「SDGs」に照らした活動をアピールする際には細心の注意が必要だと言えます。

例えば、「環境に配慮した原材料を使用している」という活動を、SDGsと結びつけてアピールしたとします。原材料自体の環境負荷は低く、「Greenウォッシュ」であげた例のように、製造工程での過剰な環境負荷がかかっているということもない・・・。
とすると一見、環境配慮としては問題無いように思います。

 

12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。

しかし、「原料は途上国での児童労働によって生産されている」となればどうでしょうか?環境的にはOKでも、「人権」「教育」「貧困撲滅」等の観点からは決して良い状態とは言えないですよね。

 

8.7
強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

このように、SDGsは視野が広いが故に、想定外の角度からウォッシュとみなされてしまうリスクがあることを把握しておきましょう。より広い範囲での影響を想定しておく必要があります。

すると、取引先やそのまたさらに取引先まで視野を広げなければならなくなります。反対に、貴社の製品を購入している取引先から、SDGs視点のチェックが入ることもあるでしょう。ここに、SDGsが世界を巻き込む大きな“うねり”を生み出す可能性があるとも言えます。

SDGsウォッシュに陥る原因② 短期視点になってしまっている…

SDGsウォッシュに陥ってしまうもう一つの原因として、短期視点であることが挙げられます。極端な例では、現状との結び付けの結果をそのままアピールしているパターンです。現状をそのままとまではいかなくとも、短期的に少し改善したことをアピールするパターンがあり、ここにギャップが生まれます。

先程の「調達先で児童労働が行われていた」例についても、「純粋に取引の現状として知られる」のと、「SDGsの裏側として知られる」のとでは、印象にかなりの差があります。

もしかすると、「現状、途上国で児童労働があることは致し方ない。いきなり児童労働を撤廃しようとしても、働かなければ困窮がエスカレートするだけなので逆効果」と言う意見を持つ人もいるかも知れません。しかし、忘れないでいただきたいのは、SDGsは2030年を基準として目指しているゴールなのです。

今現在どうなのか?ではなく、2030年までにどうするか?なのです。
企業が現状をベースに考えていると、2030年を見据えた人々は大きなギャップを感じます。

現状は理想に届いていなくとも、そこに満足したり現実と異なる姿を作り出してアピールしたりするのではなく、現状を認識した上で、2030年までの計画があるかどうかがポイントではないでしょうか?
こうしたビジョンもなく、現状の確認や、短期的、局所的な改善に留まっていると、SDGsウォッシュとみなされてしまいます。

 

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。