- ケーススタディ
「お弁当ゴミ」の取り扱いは難問!自治体によって異なる見解
自治体によって対応が分かれる廃棄物の代表例として「お弁当ゴミ」があります。
職場で従業員の方々が食べたコンビニ弁当などの容器を捨てる際の取り扱いです。
市町村レベルで、ある市では産業廃棄物、別の市では事業系一般廃棄物と、全く異なる扱いをしているのです。
たかがお弁当ゴミの扱いくらい…と思われますか?
しかし、「なぜ、こんなにバラバラなのか?」「統一して管理できないのか?」という声は多くあります。
今回は、「お弁当ゴミ」に関する法律上の扱いを整理していきます。
産業廃棄物?一般廃棄物?区分はどうして統一されていない?
こうした悩みを持つのは、多くの工場や支店などを管轄する本社のご担当者様です。
「全社統一マニュアルを作りたいのに、ローカルルールが多すぎてできない!」という切実なお悩みをよくお聞きします。
残念ながら、この違いは解釈によるところが大きいので、明確な線引や統一基準というものは存在しません。
では、このような違いがなぜ生まれるのでしょうか?その原因を整理します。
お弁当ゴミは、 自治体によって「産業廃棄物」とする場合と、「(実質的に)一般廃棄物」として扱う場合があります。
この区分の違いには、下記2点の分岐点があります。
①「従業員の飲食」は事業活動か?
②市町村が「あわせ産廃」を受け入れているか?
「従業員の飲食」は事業活動か?
従業員の飲食が事業活動に該当するかどうかについては、単純に昼食時間に対する解釈の問題です。
「就業時間中 = 仕事の一環」と考えれば、産業廃棄物です。
「休憩時間 = 私的な活動」と考えれば、一般廃棄物です。
しかし、これだけでも自治体によって、かなりバラつきが生まれます。
解釈の問題なので、各市町村に聞いてみなければ分かりません。
「あわせ産廃」を受け入れているか?
もう一つの分岐点である、産業廃棄物とされた場合でも市町村が「あわせ産廃」を受け入れているか? という点も考慮しなければなりません。
「あわせ産廃」とは、市町村が例外的に産業廃棄物を処理できる制度です。
産業廃棄物をあわせ産廃として市町村が受け入れると、手続き上は一般廃棄物と同じです。産廃であることに変わりはありませんが、実質的には一般廃棄物と同様の扱いになります。
例えば、A市の一般廃棄物受け入れ基準では、「あわせ産廃として、従業員の飲食に伴って発生した産業廃棄物を受け入れる」とあります。市で受け入れをするため、実質的に一般廃棄物です。
一方、B市の資料では、産業廃棄物の一覧に「弁当・カップめんの容器」とあり、お弁当ゴミも産業廃棄物であることが分かります。
市町村に合わせて対応するしかない?
このように、2段階の分岐点があり、お弁当ゴミは自治体によってバラバラの取り扱いをしています。
事業活動の定義もあわせ産廃の適用も、各自治体が独自の裁量で行っているものなので、明確な統一基準を作ることができません。
今後、法整備によって状況が変わる可能性はありますが、現時点では自社拠点が所属する自治体の方針を個別に確認し、拠点ごとにマニュアルをカスタマイズしていくしかありません。
無理に統一基準を作ると、自治体によっては不適正な取り扱いとなってしまう可能性があるので、しっかりと情報を精査して、管理基準を整備しましょう。
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。