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【廃棄物分析表Q&A】取り方、読み方、タイミングなど…気になる疑問を一問一答
目次
分析表、読まれてますか?
廃棄物処理の見積もりをする際に、分析表を取ることも多いと思います。しかし、届いた分析表を見ると、13号・46号・溶出・含有・ND・熱しゃく減量…etc これらの用語が並ぶ分析表を読むには、相応の予備知識が必要です。 なんとなく…感覚で見てしまっている。 特に読まずに、処理会社に送っている。 という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そもそも、何の分析か?本当に必要か?
また、分析と言っても、どんな項目をとればいいのか?どれくらいの頻度でとれば良いのか? こうした疑問も、いざ聞かれてみると自信をもって答えられないものです。 今回は、分析表に登場する主要な用語の解説と、いくつかの「よくある質問」をQ&A形式でご紹介します。
分析用語を正しく理解しましょう
環告13号(環境省告示13号・13号)、環告46号(環境省告示46号・環告46号)
分析表上に出てくる、環告13号や環告46号といった表記は、分析項目や分析方法の組み合わせから「何を目的とした分析なのか」を指します。 環告13号は、管理型埋立処分を行う基準に合致するかどうか? 環告46号は、建設資材としてのリサイクルに適するかどうか? を目的として行う分析と考えておけば、問題ありません。 さらに詳しくは、13号分析・46号分析の違いは?をご覧ください。
溶出試験(溶出分析)・含有試験(含有分析)
その名の通り、溶出試験は「廃棄物から、対象の物質が溶け出すかどうか?」を見ます。 一方で、含有試験は、「溶け出すかどうかにかかわらず、含まれているか?」を見ます。 こちらも、埋め立ての場合は溶出試験のみです。 含有試験は、リサイクルの場合かつより厳密に、堅く取り扱う場合に求められる場合があります。 詳しくは、溶出量と含有量の違いは?をご覧ください。
ND(Not Detected)とは何?
ND(Not Detected)は、「不検出・定量限界以下」を指します。分析を行った結果、「検出されなかった」ということです。 廃掃法や、土対法の基準では「検出されないこと」とされている物質もあります。この場合、NDでなければ基準を満たしていないということになりますね。 NDはあくまでも「規定の分析を行っても検出されなかった」という意味です。 必ずしも「全く含まれていない」という意味ではありません。 保証されるのは、「分析の限界よりも少ない」という事実なので、「定量限界以下」とも言われます。
熱しゃく減量とは何?
熱しゃく減量は、加熱・乾燥させた際に「どれだけ重さが減るか?」の値です。基本的にパーセントで表します。 主に、焼却灰に対して使用される尺度で、基準は10%とされています。熱しゃく減量が10%より大きい値だと、「燃え残りが多い」ことを示します。 これは、廃棄物の埋め立て基準にも使用されます。最終処分場の残存容量には、限りがあるため、熱しゃく減量の基準を設けています。(例:有機性汚泥は熱しゃく減量15%以下まで焼却すること) 「減量できるものはしっかりと減らしてから埋め立ててください」ということです。
分析対象項目以外の数値が高い…大丈夫?
処理業者から、分析項目の指定を受けても「実は生産工程上、分析対象物質以外の物質が含まれる事がわかっている」という場合があります。 この場合、対象物質ではないので、特に何もしなくて良いのでしょうか?
重要な情報を提供しない場合…損害賠償に発展することも?
いいえ、そんな事はありません。 排出事業者には、適正処理に必要な廃棄物の成分・性状に関する情報提供義務があります。 これは、法律で指定されていない物質であったとしても、適正処理の為に必要とされる情報を提供していないと判断された場合、責任を問われます。 2012年に起きた『利根川水系ホルムアルデヒド事件』は、情報提供義務を考える上で、非常に重要な事例です。
▼詳細は下記コラムにてご紹介しております。
正しい運用でリスク低減!廃棄物データシート(WDS)
毎年分析しないといけないの?
一度分析を行っても、委託先から毎年分析表を提出するように求められる場合があります。 数値は毎年変わり映えしないし・・・、費用も決して安くない・・・本当にに毎年必要なの?という本音があると思います。
必ずしも年単位ではなく、何かが変わったときに必要
こちらも、法的な規定はありません。そのため、毎年提出しなければならないということはありません。 ただし、委託契約書の法定記載事項には「廃棄物の情報に変化があった際の、伝達方法」があります。 全国産業廃棄物連合会が提供している標準様式では、下記の通り条文が設けられています。 これだけでも、情報の伝達方法は記載されているとみなすことができますが、更に次の条文も、あります。 この「提示する時期又は回数」には、「変更の都度」や「乙の求めに応じて」などと書かれていることが一般的です。 しかし、この欄に「少なくとも1年に1回以上」などと書かれていれば、それは「毎年分析表を提出する契約」をしていることになります。 法律上、義務はなくとも契約上は毎年分析する義務が発生する場合もあります。こうした契約条件は、お互い協議の上決めることです。一概に、要る・要らないとも言えませんが、「必ず毎年でなくても良い」ということを知らなければ、交渉もできません。
適切な処理委託は、正しく読むことから始まります
いかがでしたでしょうか? 分析表に書かれている内容が何を意味するのか? 求められている分析項目以外の物質をどう取り扱うべきか? 分析するタイミング(法律上と契約上の義務)はいつか? これらの内容を理解していなければ、委託先の求める分析が「一般的な基準よりも過剰」であったとしても、気づく事ができません。 また、逆の場合もあります。「必要な分析、情報を求められずに、不十分な情報提供のみで委託」してしまった場合、あとで思わぬトラブルが発生してしまうかもしれません。 求められるままに・・・いわば「受け身の情報提供」ではなく、分析の意味を理解し、しっかりと根拠を持つことは、コスト・リスクの両面を改善するための大きな助けになります。 まずは、自社が保管している分析表を読み返して見ることから、初めてみてはいかがでしょうか?
Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー
セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。