溶接ヒューム②~必要な措置の流れ編~

溶接ヒューム規制②<br>~必要な措置の流れ編~

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溶接ヒューム規制②
~必要な措置の流れ編~

前回は、溶接作業が屋内継続作業に当たるかどうかの基準を確認しました。
今回は、屋内継続作業であると判断したら、どのような規制がかかるのかを確認していきましょう。

特定化学物質として必要な措置の流れ

屋内継続作業を行う際の溶接ヒュームは、特定化学物質としての規制がかかりますので、必要な措置を講じなければなりません。

特に、全体換気装置の設置が必須です。少なくとも全体換気装置が必要ですが、プッシュプル型換気装置や局所換気装置といった、同等以上の効果が見込める換気方法でもOKです。なお、全体換気装置は1ヶ月ごとに点検が必要です。

点検は「化学物質作業主任者」が行います。この点検では、有資格者を専任しなければなりません。

また、屋内作業場は水洗等の粉じんが飛散しない方法で、毎日1回以上掃除を行う義務があります。これは床に堆積していた物質が、人の動きなどで舞い上がってしまうリスクがあるためですね。

そして、現在の作業環境で「溶接ヒューム濃度の測定」を行います。改正により測定が必要になったタイミング(令和4年3月31日)で現在の濃度測定を実施する必要がありましたが、もし実施していない場合は、速やかに実施してください
測定実施済みであっても「新しい作業方法を採用する」「溶接材料を変更する」など、溶接ヒュームの濃度が変わる可能性がある変更を行った場合はその都度、濃度測定が必要です。

濃度測定の結果「マンガンとして0.05mg/m3以上」となった場合は、換気装置の風量を増加させるなど、対策を講じなければなりません。対策を実施したら、再度測定を行います。その後、濃度に応じて必要なマスク(呼吸用保護具)を選択・使用します。措置の流れを(図1)に示します。

(図1)出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542)

 

濃度の測定方法

溶接ヒュームの濃度測定には「個人サンプリング法」(図2)が認められています。

これは、「サンプラー」をつけて実際に作業を行い、どの程度のばく露があるかを測定するものです。この測定は、第1種作業環境測定士や、作業環境測定機関など、十分な知見のある者による実施が求められています。
個人ばく露測定による溶接ヒュームの濃度の測定等を行ったときは、 その都度必要な事項を記録します。(当該金属アーク溶接等作業方法を用いなくなった日から3年間保存)


(図2)出典:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「金属アーク溶接等作業を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」
(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=542)

そして、濃度測定の結果に応じて必要な呼吸用保護具を選定します。選定の基準は、次回に解説します。

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。