- ケーススタディ
委託契約書作成のケーススタディ :この書き方で合ってる?
産業廃棄物の処理を適切に委託するためには、法的要件を満たした契約書の作成が必要不可欠です。ですが、契約書の作成には様々な注意点があり、どの点に気を付けるべきか分かりづらい場合もあるかと思います。
今回は、2つの事例をもとに委託契約書を作成する時の注意すべきポイントを紹介します。皆様の契約書作成に少しでもお役に立てれば幸いです!
目次
ケース①:法定記載事項の「数量」「単価」の「単位」は揃っていますか?
契約書の法定記載事項になっている廃棄物の「数量」「単価」の項目。記入するうえで「単位」は確認されていますか?
よくある例を見ていきましょう。
【よくある例】
・予定数量:1,500t/年
収集運搬単価:¥60,000/車
・予定数量:10本/年
処分単価:¥48/kg
では実際に計算していきます。
数量が1500tで1車あたり¥60,000、数量が「t」です。単価が「車」なので、単位を揃える必要がありますね。ところが、分かっている年間予定数量から年間で何回運搬するのかを導き出せません…。もう一つの事例も同じように、数量が「本」ですが、単価と単位を揃えようにも1本が何kgなのか分からず計算ができません…。
単位が異なることのリスクとその対応
「単位」が揃っていないことにより、契約書に貼る正しい印紙額が分からなくなってしまいます。この場合に起こるのが「年間取引金額の計算ができない」という事態です。
よくある例で挙げたとおり、単位が揃っていないことで年間取引金額を正確に算出することが難しくなります。正確に計算できないということは、正しい印紙額も計算することができなくなります。
このようなリスクを発生させないために「単位」は揃えておく必要があります。
【修正例】
修正前:予定数量1,500t/年
収集運搬単価:¥60,000/車
↓↓
修正後:予定数量:200車/年
収集運搬単価:¥60,000/車
修正前:予定数量:10本/年
処分単価:¥48/kg
↓↓
修正後:予定数量:10本/年
処分単価:¥50,000/本
「単位」を揃えることで、正しい年間取引金額を算出できるので、印紙も正しい金額を貼付することができます。
ケース②:排出予定が未定の廃棄物の数量、空欄になっていませんか?
排出予定が未定だけど、念のため契約を締結しておくといったこともあると思います。契約時点では排出予定が未定です。この場合、廃棄物の数量はどのように記載するべきなのでしょうか?「未定だから空欄に…。」それはNGなんです!
予定数量が空欄であることのリスクとその対策
排出予定が未定とはいえ、廃棄物の数量を空欄にすることには、次のようなリスクが考えられます。
1:法定記載事項の欠如
「数量」は法定記載事項です。そのため空欄にしてしまうと、委託基準違反となってしまいます。行政の立ち入りなどで発覚した場合には罰則となります。
2:適切な印紙額の貼付ができない
数量が空欄だと、年間取引額を正確に計算することができません。ケース①でも触れましたが、年間取引額を正確に計算できていないと、適切な印紙の貼付もできなくなってしまいます。
数量の項目はあくまで予定での記載で問題ありません。排出予定が未定であっても、予定の数量を記載しておく必要があります。運用される中で、契約時に書いた予定数量から印紙額が変更になる程の大幅な変更があった場合には、その時に覚書等で数量の変更をしておけば安心です。
委託契約書の作成でよくあるケースを2つ挙げましたが、いかがでしたでしょうか?
法定記載事項を適切に記載し、「単位」や「数量」にも注意を払う重要性をお分かりいただけたかと思います。契約書は罰則対象になる要素を多く含んでいるため、違反を防ぐためにもしっかり確認していきましょう!
Madoka Sato
環境コンサルティング事業部で、法令担当として委託契約書の作成をはじめ、クライアントからの契約書や行政提出書類等に関するリーガルチェックや質問等、法令実務の相談窓口として対応している。 また、廃棄物管理監査サービスでは、監査員として全国の排出企業の事務所・工場に訪問。適正管理に必要な書類や管理システムの運用状況を実際に確認し、コンプライアンスの観点で評価・改善事項の提案などを行う。