労働安全衛生法改正Q&A集|イーバリュー株式会社

労働安全衛生法改正Q&A集

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労働安全衛生法改正Q&A集

2022年~24年にかけて順次施行されている改正労働安全衛生法

こちらの、改正内容について寄せられた質問などを取りまとめてご紹介します。
お問い合わせいただいた内容や、セミナーでの質疑応答などから、多くの事業者様に参考にしていただける内容を抜粋しています。

リスクアセスメントの記録と保存について

Q.リスクアセスメントの記録について、決まった様式はありますか?

A.リスクアセスメントの記録に特定の様式はありません。
従来、リスクアセスメント実施方法も厚生労働省から様々な資料が配布されていますが、固定された特定の手法はなく、記録の様式についても同様です。
自社に決まった手法や様式がなければ、リスクアセスメント実施支援ツール「CREATE-SIMPLE」を使用し、様式も参考にするのがお勧めです。

「CREATE-SIMPLE」の様式も義務ではないので、自社で必要な項目をアレンジしてもOKです。

▼リスクアセスメント手法の資料については下記をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/index.html

Q.以前から使用している化学物質についても、実施と記録が必要ですか?

A.実務上は、既存の化学物質も実施が必要と考えます。
厚生労働省のQ&Aでは、実施義務があるのは対象物質を新規に採用したり、使用方法を変更したりといった場合です。
しかし、既存の対象物質についても「指針による努力義務」としており、既存のものでも安全面の対策が必要なことは変わりないため、事業場で使用する対象物質全てに対して、リスクアセスメントの実施と記録が推奨されます。

Q.リスクアセスメントは、作業を行う職場ごとに実施する必要がありますか?
最もリスクがある職場のアセスメントを記録すれば大丈夫でしょうか?

A.原則、すべての職場で行ってください。
リスクレベルは単純な上下で考えられるものばかりではなく、様々な条件の組み合わせです。
各職場の条件でアセスメントを行う必要があります。

Q.防腐剤のスプレーなどはリスクアセスメントの対象ですか?

A.現状のリスクアセスメント対象物質が含まれていれば、対象です。
ただし、「一般消費者用の製品」は対象から除外されます。

別容器で保管する場合のラベル表記について

Q.移し替えて保管する場合、ラベルに必要な項目は決まっていますか?

A.ラベルに必要な項目は以下です。

1.名称
2.注意喚起語
3.人体に及ぼす作用
4.安定性及び反応性
5.貯蔵または取扱い上の注意
6.標章(絵表示)
7.表示をする者の氏名、住所及び電話番号

ただし、2,3,4,6については、SDSなどに危険有害性が分類されていない場合、記載不要です。
1,5,7の項目は有害性に関係なく必要です。

Q.SDSを社内システムに電子保存しています。
保管容器には名称飲みを表示し、SDS内容についてはシステムを参照でも良いでしょうか?

A.法律上、容器表示が難しい場合はSDSを備え付けることでも可能となっています。
ですので、SDSを参照とすること自体はNGではありません。
ただし、ラベル表示の目的を考えると「すぐに見られる」状態が必要です。
システム上のアクセスがスムーズに行なうことができ、トラブル時でもすぐに参照できる状態であればデジタル保管でも問題ないと考えます。

労働者への意見聴取・衛生委員会の付議事項について

Q.労働者への意見聴取は、具体的にどのようなことを聞けばいいのでしょうか?
記録の様式は決まっていますか?

A.特定の様式はありません。
下記の内容が検討されたことがわかる内容であれば、様式は自由です。

・リスクアセスメント対象物にばく露される程度を低減させるために講じた措置の内容
・労働者のばく露状況
・労働者の作業の記録(がん原性物質に限る。)
・関係労働者の意見の聴取状況

Q.衛生委員会の設置は、複数の事業者が共同して作業する建設現場の人数が50人以上の場合も必要でしょうか?

A.建設現場は原則、衛生委員会の設置は不要です。
衛生委員会の設置は「常時使用する労働者が50人以上(業種により100人以上)」の事業場です。
建設現場は基本的に臨時のものですから「常時」の条件に当てはまりません。
作業員が所属する営業所などの事業場が50名以上だった場合に、各現場での安全管理を衛生委員会で検討することになります。

がん原生物質を取り扱う作業の記録について

Q.作業の記録は、どういった項目を残せばよいのでしょうか?

A.法で決められているのは下記の項目です。

1.労働者の氏名
2.従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間
3.特別管理物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び事業者が講じた応急の措置の概要。

少なくとも上記の項目を記録しておきましょう 3については、以下のようなイメージです。

「実験作業中に〇〇の瓶を倒し破損、一時的に吸引してしまった。気分不良を訴えたため、医師へ受診し、1日安静状態で経過観察となった。」

特定の様式は有りませんが、これらの項目を表にして、整備しておくと良いですね。

職長教育の対象業種拡大について

Q.食料品製造業の商品開発のみを行う事業場です。
製造を行っていない場合でも、業種が該当すれば職長教育は必要ですか?

A.不要です。
対象業種はあくまで、その業種の業務(食料品製造業なら、食料品の製造)を行う場合が該当します。
食料品の製造を行わない場合は、会社としての業種が該当していても事業場は非該当となります。

Q.「食料品製造業」は、畜産動物の餌料製造も対象ですか?

A.対象ではありません。
日本標準産業分類では、「飼料・有機質肥料製造業」は中分類「飲料・たばこ・飼料製造業」に該当し、「食料品製造業」ではないため、対象ではありません。

ばく露濃度の低減について

Q.ばく露濃度の測定の実施には資格が必要ですか?
作業環境測定には、個人サンプリングでも資格が必要だったと思うのですが?

A.濃度基準値設定物質などのばく露濃度を測定する際には、現状では資格要件はなく、バッジ型のサンプラーなどを使って測定すれば問題ありません。
作業環境測定は、個人サンプリング法が認められ、こちらは作業環境測定士による実施が必要なため混同しがちです。
どちらも知識と経験が必要なものですので、ばく露濃度の測定についても可能な限り有資格者に行わせることが推奨されています。

労働災害発生事業場の対応について

Q.労働災害が発生した場合に、労働基準監督署から指示を受けて、化学物質管理専門家の助言を受けなければならないということですが、専門家は外部の者でないといけないのでしょうか?

A.必ずしも外部の者でなければならないわけではありません。組織内部の者でも資格要件を満たせば結構です。
ただし、労働災害の再発防止という観点から、外部の者であることが望ましいとされています。

【専門家の要件】
・労働衛生コンサルタント(労働衛生工学)で5年以上実務経験​
・衛生工学衛生管理者として8年以上実務経験​
・作業環境測定士として6年以上実務経験かつ厚生労働省労働基準局長が​定める講習を修了​
・その他上記と同等以上の知識・経験を有する者​
(オキュペイショナル・ハイジニスト有資格者等)​

化学物質管理責任者について

Q.化学物質管理者は、事業場に1名で良いですか?それとも作業職場ごとに1名必要でしょうか?

A.事業場に1名で構いません。
事業場に複数名選任することも可能ですが、作業職場ごとに選任する必要はありません。

Q.化学物質管理者は、複数の事業場を1名が兼任しても良いのでしょうか?

A.法律上は、専属の規定がないので複数事業場の兼任を明確に禁止してはいません。
ただし、事業場での化学物質管理を行うためにはその事業場に所属する者であることが望ましく、行政も各事業場で1名にするように指導することが予想されます。

特殊健康診断頻度の緩和について

Q.作業環境測定が、第一管理区分の職場は特殊健康診断の緩和が適用されますか?

A.直近の作業環境測定の結果のみでは、判断ができません。
下記の3条件をすべて満たす場合に、通常6か月の頻度を1年に緩和することができます。

①当該労働者が作業する単位作業場所における直近3回の作業環境測定結果が第一管理区分に区分されたこと。(※四アルキル鉛を除く。)
②直近3回の健康診断において、当該労働者に新たな異常所見がないこと。
③直近の健康診断実施日から、ばく露の程度に大きな影響を与えるような作業内容の変更がないこと。

※四アルキル鉛は作業環境測定が義務付けられていないため、②③を満たせばOK

 

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。