いまさら聞けない許可証の読み方

いまさら聞けない許可証の読み方

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いまさら聞けない許可証の読み方

皆さんは、許可証を隅々まで読み込んだことはあるでしょうか?

契約時には、品目や処分方法が契約内容と合致しているかを確認すると思います。その後は、ほぼほぼ有効期限しか見ていない…という方も多いのではないでしょうか?

しかし、許可証には多くの項目があり、そこから様々な情報が読み取れます。今回は、普段あまり読み込まない許可証に書かれている情報を改めて整理してみましょう。「こんな項目があるなんて知らなかった!」という情報もきっとあるはずです。

許可証の全項目をチェック!

例えば、一般的な処分業の許可証はこのようなレイアウトです。自治体によって細かな部分の違いはありますが、項目自体は基本的に変わりません。

では、各項目を見ていきましょう。

ア:許可番号
許可証の右上に書かれている、10桁または11桁の数字です。この数字は、それぞれに意味があります。

A:都道府県/政令市番号
各自治体に番号が振り分けられています。例えば、この部分が「001」の許可証は全て北海道が発行した許可証です。

B:業の種類を示す番号
処分や収集運搬だけでなく、表のように細かく10の番号に分かれています。

C:都道府県/政令市が自由に使用できる番号
各自治体で自由に設定しています。ここに0以外の数字が入っていると、何らかの分類分けがされていると予想できますが、独自のルールで分類しているので、自治体に聞いてみないと分かりません。(内容によっては教えてもらえない可能性もあります)

D:固有番号
処理業者に対して付与される6桁の番号です。1つの会社に対して、1つの番号が付与されます。別の都道府県だったり、処分と運搬だったりと、違う許可証であったとしても、この固有番号は必ず同じです。

イ:優良マーク
優良認定を受けている場合に表示されるマークです。
万が一、更新時などに優良マークがなくなってしまったら、何かの理由で優良認定が受けられなくなってしまったということです。この場合は、必ず理由を確認しましょう。例えば、「財務状況の基準を満たさなくなった」という理由であれば、経営が悪化しているということですから、要注意です。

ウ:住所・氏名・代表者
ここでの住所は、会社の登記上の住所であり、基本的には本社所在地の住所になっています。ここに表示されている住所を契約書やマニフェストの、処分事業場として記載すると、「処分施設と違う場所」の住所を書いてしまう可能性もあります。注意しましょう。

エ:許可の年月日
文字通り許可が下りた日ですが、新規許可ではなく更新許可の場合には更新の年月日が記載されます。

オ:許可の有効期限
文字通りの有効期限です。最も見慣れた項目ですね。許可の年月日から、通常5年、優良認定の場合は7年が有効期間となっています。

以降は、各項目がそのまま順番に番号を振って列挙されていきます。収集運搬業と処分業で項目に微妙な違いがあります。

・事業の範囲
処分方法や、処分できる産業廃棄物の種類が記載されます。運搬許可の場合は運搬できる産業廃棄物の種類が書かれます。積替え保管を持つ場合には、「積替え保管を除く」と「積替え保管を含む」で分けて廃棄物の種類が列挙されます。また、積替え保管の場所や、積替え保管を行う廃棄物の種類、積替えのための保管上限及び積み上げることができる高さなどの、積替え保管に関する情報も記載されます。

・事業の用に供する全ての施設
処分施設ごとに、設置日や設置場所、処理能力などが書かれます。自治体内にある全ての施設が列挙されるため、例えば県内に2箇所の工場を持つ場合などは、別の市にある施設がこの項目に列挙されます。契約書やマニフェスト等に記載する住所を間違えないように、しっかり確認しましょう。

・許可の条件
許可に何かしらの条件がつく場合に、記載されます。
例えば、「処理後の品質検査を定期的に行い、報告すること」「敷地境界線の臭気濃度は〇〇未満を遵守すること」などといった、許可を取得する上で特別な条件が課されている場合にその内容が記載されています。条件がない場合は「なし」と記載されます。

・許可の更新または変更の状況
これまでの更新履歴や、いつ優良認定を取得したかなどが分かります。設備を増やした(減らした)等の場合も、変更許可の履歴として残ります。更新履歴が多いということは、それだけ長く業を続けているということですから、一定の信頼ができます。

・積替え許可の有無
収集運搬業許可のみに記載される項目です。積替え許可について「有・無」が記載されます。しかし、積替え保管の情報については、「事業の範囲」に詳しく記載されていました。今更、有無だけを書いて意味があるのでしょうか?

そう思われた方もいるかも知れませんね。でも、事業の範囲の部分に積替え保管場所の情報が記載されていても、この項目は「無」になる場合があるのです。

どういうことでしょうか?皆さんは、このカラクリがお分かりになりますでしょうか?

実は、この項目をもう少し丁寧に表現すると「都道府県内に政令市等がある場合、積替え保管場所が政令市内に所在することを理由とした政令市の許可が別に存在するかどうか?」を表しているのです。まだややこしいですね…。

この項目の存在には前提として、

・収集運搬業許可は、都道府県の許可を取得していればその都道府県内にある政令市等で個別に許可を取得しなくとも、都道府県内全域で収集運搬業を行うことができる

・例外として「政令市等に積替え保管場所を設置している場合」には個別の許可が必要

という情報が必要です。

ということは、例えば愛知県の収集運搬業許可があり、事業の範囲に積替え保管の情報がなかったとしても、この時点で「県内に積替え保管場所が無い」と判断してしまうのは早計ということです。愛知県には「名古屋市」をはじめとして、5つの政令市・中核市が存在します。ここに積替え保管施設をおいた場合、愛知県の許可と政令市等の許可が存在する可能性があります。この項目では、その有無を教えてくれているのです。

もし、名古屋市に積替え保管許可がある場合には、次のように表記されます。

これは「市の方にも許可があるから、そっちもチェックしてくださいね」と教えてくれているというわけです。

・規則第9条2第8項の規定による許可証の有無(運搬)
・規則第10条の4第7項の規制による許可証の提出の有無(処分)

これは、廃棄物処理法施行規則の条文を引用していますが、この部分だけを見ても何のことだか全く分かりませんね…。これは、運搬と処分で引用している条番号が違いますが、同じことを指しています。また、許可の取得時期によっても、項番号が違う場合もあります。これは別の部分の法改正によって繰り下がった影響です。

さて、本題の何を示しているか?ですが、「先行許可制度」を利用しているかどうかが書かれています。先行許可制度というのは、すでに許可を受けている業者が別の許可を申請する場合に、すでに保有している許可証を提出することで、住民票の写し等、添付書類の一部が省略できる制度です。

例えば、

産業廃棄物収集運搬業の許可を持っている状態で、同じ県で特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を申請する。
A県の産業廃棄物収集運搬業許可を持っている状態で、B県で産業廃棄物収集運搬業の許可を申請する

上記のような場合に、書類が一部省略できるのです。

皆さんの立場ではあまり関係がない情報ですが、「条番号だけで書かれていて全く分からない」のか「あまり影響がない項目だな」と把握しているのかでは随分違いますね。

以上で、許可証の項目を全て網羅できました。

いかがでしたか?「え?知らなかった!」という項目はありましたか?普段、何気なく見ている許可証でも隅々まで見てみると、様々な発見があったのではないでしょうか?

許可更新中の取り扱い

最後に、許可証の管理業務で最も多い「更新許可証の取り寄せ」についても、確認しておきましょう。

許可の期限が切れた場合、新しい許可証を取り寄せなければなりません。通常、期限が切れる日に更新された新しい許可証が発行されていることは稀です。新しい許可証が発行されるまでには、少しタイムラグがあります。その間は、「申請書の写し」を取り寄せていればOKです。

ただし、注意しなければならないのが「申請書の写し」のまま放置してしまうことです。明確にいつ頃までに許可が下りるという基準がないので、気がついたら半年以上申請書のままで放置してしまっていた!という事態もありえます。

この間に、許可が下りていればまだ良いですが、不許可となっている可能性もゼロでは有りません!そうであった場合、知らずに無許可業者に委託を続けてしまうことになります。

最低でも、月に1度位は「どうですか?」と確認するようにしましょう。

 

Takeshi Sato 環境情報ソリューショングループ マネージャー

セミナーインストラクターとして、数々のセミナーを担当。オンラインセミナーの実施やeラーニングシステムを使った動画コンテンツの制作にも注力する。コンテンツの企画から講師までを一貫して手掛け、通年80回以上の講師実績を持つ。 また、イーバリューの法令判断担当として、クライアントの法解釈に関する質問や相談に対応。対応件数は年間約1,000件に上る。法令知識だけでなく、省庁や管轄自治体等の行政への聞き取り調査も日常的に行っており、効果的な行政対応のノウハウを持つ。